2020年1月1日(水)

▼「ねずみ男」といえば水木しげるの漫画『ゲゲゲの鬼太郎』で主人公・鬼太郎の悪友だが、フロイトが強迫神経症(不安障害)の命名とともにその症例にちなんで通称とした別名でもある

▼漫画は、欲に目がくらんで敵側に近づいて鬼太郎を窮地に陥れ、失敗したりひどい目にあって改心するが懲りない。敵はたたきのめされるが、ねずみ男は物語中でも読者にも、笑われバカにされるが憎まれない。フロイトの患者はネズミが体内に入る恐怖でおはらいにのめり込む

▼共通点があるような。今年はネズミ年。嫌われ者であることは洋の東西を問わぬが、其角に「明くる夜もほのかに嬉し嫁が君」の句がある。「嫁が君」はネズミの忌み名で新年の季語。7日は「ネズミの嫁入り」として祝う

▼「餅花やかざしにさせる嫁が君(芭蕉)」。「餅花」は小正月(15日)に豊作を祈願して飾るマユ玉。コメ蔵の大敵ネズミも一緒に願っている。おむすびを追ってネズミの国へ迷い込む昔話『おむすびころりん』は、大黒の使徒とされるネズミが常世の国(理想郷)への案内役という前提

▼十二支の文字は単に日付を記録する言葉で意味はなかったとされるが、筆頭の「子」にネズミを当てたには各説ある。「嫁の君」には子だくさん、すなわち家の繁栄の願いがあったとされるが、年賀状でしか十二支を思い出さなくなった現在、子宝はどうか

▼性善説を唱えた孟子は、子どもの受難に思わず手を差し伸べる心に例えた。悲惨な子どものニュースが絶えない。せめて年の始め、子どもを大切にする精神風土に立ち戻りたいと願う。