2019年12月8日(日)

▼注目の東名高速道路でのあおり運転の控訴審で、東京高裁は審理を地裁に差し戻した。被害者遺族が「いつまでも刑が決まらず歯がゆい」「元に戻るような感じで、すっきりしない」。肩すかしされた感が否めない

▼検察、弁護人、裁判官の司法三者による公判前整理手続きで、裁判官が「危険運転致傷罪は成立しない」と意見表明しながら、本裁判で同罪を認めたのは「被告や弁護側への不意打ち」で、違法な手続きという

▼その二審は、差し戻しを命じながら、一審の結論部分である危険運転致傷罪は認める。差し戻し審へ圧力をかけたつもりか。裁判と国民の乖離を埋めるのが目的の裁判員制度に逆行し、身内で不毛の法律論議をしているようだ

▼「裁判官が非常識ということは弁護士の間では常識」というのは四半世紀前に法律雑誌『ジュリスト』に掲載された弁護士のエッセー。そんな裁判官もいるということだろう。性犯罪中心に一昨年改正された刑法でのあきれた判決に女性らが反発している。判例がない分、非常識がさらけ出されるか。あおり運転もそうかもしれない

▼裁判官は「乗り降り自由」が原則。合議の中で、自分の意見をよりいいと思う方へ自由に変えていくことだが、公判前整理手続きの意見が変えられないのなら、裁判員制度の合議は成立しない

▼裁判員の負担を軽くするため証拠を整理し、争点を絞り込む公判前整理手続きが、本裁判を縛るとなれば本末転倒。司法改悪と言わねばなるまい。裁判員裁判のやり直しを専門裁判官だけの高裁が命じるには、誰でも分かる理由でなければなるまい。