2019年9月23日(月)

▼伊勢湾台風追悼式典のパネル討論で、小四被災した木曽岬町の大橋光則さんが「日ごろから逃げる場所を決め、途中の道に危険物がないかなどを確認しておく」と語っている。昨年の西日本豪雨を受けた国の有識者会議は「自らの命は自らが守る」ことを報告した。具体的にどうするのか。大橋さんの言葉に集約されている

▼災害に備えた準備、中でも緊急時のマニュアルづくりは不可欠だが、訓練をしなければ机上の空論に終わる。そして、いざという時にはマニュアルにとらわれない臨機応変の判断が求められるということだろう

▼最近の災害は「途中の危険物」すなわち流木がおびただしい。台風15号での電力復旧の予想外の遅れも、倒木で作業が遮られているという。平成25年の台風18号による安濃川の氾濫も、川沿いの橋や谷に巨木が突き刺さり、母子の死体が発見された安濃ダム・錫杖湖は流木で埋まった

▼増水した川に並行する県道が濁流にのみ込まれ、流木を含む土石流が母子の車を襲ったのだろう。十人の死者・行方不明者を出した平成16年災害も大規模な山崩れが原因。森の地力が落ち、それと切り離して開発が進んでいたことをうかがわせる

▼かつて停電は日常茶飯事だった。風雨の中、ろうそくの火に家族が集い、一体感が高まった。電力会社の作業員が電柱に登って復旧に努めている姿を想像した。今はひとたび発生するとたちまち日常生活に支障をきたす

▼ついつい「また想定外か。北海道大停電の教訓はどうした」と、嫌みの一つも言いたくなる。豊かさとぎすぎすした社会が並走する。