2019年9月14日(土)

▼「強力な反論があると覚悟しています。どうぞ」と、一票の格差是正論を展開して竹中治堅政策研究大学院大学教授が会場を見回した。が、手を上げる参加者はなかった

▼6年前の共同通信加盟社論説委員会議である。竹中教授は、一票の格差の実例をあげて、一人20万人の国民を代表する議員3人の意見が、一人100万人の議員一人より優先されるのはおかしいと現状の仕組みを批判し、県単位で定数配分を考えることの法的正当性を否定。それが許されるのは憲法改正しかないと語った

▼全国の地方紙の論説委員が反論しなかった理由はそれぞれだろうが、納得したからでないことはその場の空気で読み取れた。先行する現実の後追いになるのが法律の宿命だし、都道府県単位の地方自治の枠組みを取っ払う考え方が国民大多数の合意とも思えない

▼法的解釈で実社会がすべて割り切れるか、むしろ逆だろうという考えが、社会の現実に向き合ってきた新聞記者にはあったのかもしれない。県議会は定数問題を諮問する第三者機関の委員を県にゆかりのない法曹界や学界関係者で人選し、会議は首都圏で開く

▼「客観的に議論してもらうため、議員らと個人的に付き合いの深い人などは避けた」と中嶋年規議長。県の現実、県民から遊離した協議が意味あるだろうか。委員それぞれの主義、信条に沿った論戦になるのだろうが、それが「客観的」の正体ということか。全国どこの自治体にも当てはまる立派な提言がまとまるのだろうが、県議会の第三者機関として果たしてふさわしいのかどうか

▼前途洋々、多難でもある。