2019年6月8日(土)

▼「幸福感」を調べる「県民意識調査」の結果を発表する鈴木英敬知事の表情は、本紙報道写真を見る限りいつもの覇気がない。「県民力でめざす『幸福実感日本一』の三重」を基本理念とした平成24年からの調査が、2年続きで低下した。そのせいだとすれば分かりやすい

▼何を幸福と感じるかは人それぞれで、天国にいる人が全員幸福かというとSF映画などでも違いはある。人間の欲望に限りなく、不満が芽生えるのがさがとも言われる。環境が改善されればされるほど向上心にも似た不満が一定期間、増加することもあろう

▼人生百年時代などと、このところ取りざたされている。中高年の多数派は、将来を見直す気にならないか。「とても幸せ」と言い切る人は減少していこう。だから「一回目からは微増し、近年では一定の数値で推移」などの知事の解説は解説のための解説として、結婚、出産への数値が低下したのは将来への不安と無縁でもあるまい

▼幸福感を判断する基準が、トップの常連だった「家族関係」から「健康」へ入れ替わった。「自由な時間」や「生きがい」が上昇したのと合わせ、人生百年時代が意識の中にじわりとのしかかってきたことをうかがわせる。結婚、出産を重点施策としてきた知事が「重く受け止め」るというのは、その程度で水を注されるのを反省するという意味では、よく分かる

▼合計特殊出生率がどうあれ一炊の夢となりかねない。県民意見を予算に反映させると、今回はことのほか力を込めている。回収率の低下を含めて、足元の揺らぎを実感しているのかもしれない。