2019年5月29日(水)

▼大事故・事件に伴い県内でも点検が始まるのがお決まりなのに、大津市で散歩中の保育園児らに車が突っ込んで16人死傷した大惨事では一向音沙汰がないと書いたのは事故から五日後だった。20日を経てようやく調査の指示が出たのは、忘れていなかったのだと喜びたい

▼一日を争ってどうという調査でないことはむろんである。ブロック塀倒壊調査以外は、過去の調査を確認する程度で、結果が施策にいかされたかは判然としないのも確かだから、開始は6月上旬とさらに先とはいえ「県内全ての保育所や認定子ども園、幼稚園などを対象に独自調査する」という鈴木英敬知事の決意は心強い

▼各所・園が散歩コースを調べて7月中旬までに危険箇所を抽出。「優先順位を付けて」というのが財政難と言われる中で不安要因だが、ガードレールなど必要な安全対策を講じるそうだ。「一瞬の緩みや一瞬の油断が事故につながった。行政として、安全に万全を期す努力をしたい」と鈴木知事。その言やよしだが「行政として」というのも気にかかる。発生後は「やるべきことはやった」という言葉が、それに続くのが定番だからだ

▼大津市の現場は市の危険対策箇所としては優先順位にも入っていない〝安全〟なはずの場所だった。保育士は、車道から遠い側の歩道を歩くなど安全に配慮し、信号待ちの時も、一番安全と見られる場所に園児らを待機させていて惨事に襲われてしまった

▼行政の常識・基準とは異なる〝危険箇所〟だったのである。調査結果から誰が危険箇所を選び、優先順位を付けるのかも問われている。