2019年5月3日(金)

▼皇位の証しを受け継いだとする新天皇初の国事行為の儀式「剣璽等承継の儀」に、皇族は2人しか参列されなかった。皇位を継承する成年男子に限るとする前例を踏襲したからだ。前回の7人に比べ、生身の人間に依存する皇位継承の不安定さを目の当たりにする

▼前の天皇陛下がビデオメッセージでにじませた「生前退位の意向」も根底には生身の人間が「象徴」としての務めを果たすことの限界を訴えたのではなかったか。新皇后雅子さまが適応障害と診断され、長い療養生活を送られてきたのも、お世継ぎ問題があったとされる。悠久の伝統文化を一身に背負わせることの残酷さにお二人とも、血の叫びをあげたのだと言えなくはない

▼前の陛下の声に、国民は今初めて気づいたように大賛成で答えた。小泉内閣で女性・女系天皇が検討されたが、悠仁さま誕生で議論はしぼんだ。本質論に関わる面倒は避けて先送りする国民性か。人間性の問題でとやかく言うにはためらいがあるか。めでたい、めでたいと言っていれば丸く収まっていくというお気楽な性分からか

▼結局お一人の問題として収れんしつつある生前退位の帰結を、前の陛下は今、どんなお気持ちで眺めているか。退位特例法は付帯決議で皇位継承問題の速やかな検討を求めている。一歩前進と言えることになるのかどうか

▼「象徴」を模索した前の陛下に対し、新陛下は「象徴の責務を果たす」と明言された。「常に国民を思い、国民に寄り添いながら」。国民も喜んでばかりではなく、皇室のあり方に、関心を持ち続けることで応えなければなるまい。