2018年10月14日(日)

▼県医師会の働き方改革担当者が「病院は警戒心が強くて」と語っていたのは1年ほど前の報道機関との懇親会の時だ。長時間労働に対する何らかの制約が求められることへの警戒ということだろう

▼実際、医療現場の忙しさはすさまじい。当直勤務とは別に24時間、緊急事態に備えて神経が休まらず、疲労が蓄積されるというベテラン医師の話を聞いたのも5、6年前の県医師会主催のシンポジウムだった。昨年の機関誌には2年間の初期研修を終えた女性後期研修医が昼食を取る時間もないほどと書いていた

▼その時の所属は県立総合医療センターだったが、勤務先を数カ所変えた後で、次の転勤先も決まっていた。いずれも特色ある高度な技術を持つ病院。戦力になる一方で、自身のスキル向上につながる形になっている。労働者と研究者が一つの体に同居する。実態は労働者でも、心は研究者たれと教えられたりもする

▼異動の采配を担っているのが大学の医局ということだろう。本人のスキル向上と病院からのマンパワー要請を同時にかなえなければならない。東京医科大が女性の合格者を抑制したのは、二つの要請を満たすには綱渡り的技術が必要だからだろう。出産や育児で通常(長時間)勤務ができなくれば狂いが生じる。東京医科大だけのことではあるまい

▼文部科学省の訪問調査で、予想された通り、複数の大学医学部が女子や浪人の受験生に不利な扱いをしていたことが明らかになった。医療現場の働き方改革を急がなければ、県も、いつ問題が起きてもおかしくない状態に置かれていることになる。