2018年10月8日(月)

▼東京・築地市場は本紙東京支社から徒歩で10分ほどの距離。赴任していたころは、名刺交換すると「いいところにありますね」とよくうらやましがられた。食道楽とは無縁で、探訪の気もなかったので飲食店が並ぶ場外市場は不案内だったが、訪れる客の方がずっと詳しく、逆にしばしば案内された

▼地方の市場でのアルバイト経験があり、築地市場そのものは通りすがりによくのぞいた。移転問題が混乱したころはお隣さん意識が強く、大いに気をもんだ。移転中止も取りざたが、親友の転勤が白紙になる程度に期待したので、次々問題点を指摘していた小池百合子知事が移転を発表した時は唐突感で、何のこっちゃという気がした

▼県の中央市場設置計画が全国一律の国の構想で始まり、言われるまま強引に進めた県によっておよそ当初の構想の面影もとどめぬ形になった経緯は、実情無視の政治がどんな結末をもたらすかの一つの教訓になっていようが、石原都政で、ケタ違いの闇が背後でうごめいていたのか。小池知事が持ち前の政治勘で、希望の党結成に至るのちの国政への思惑に利用したか。真相なるものがあるのかどうかも含めて、釈然としないまま築地市場は営業を終え、豊洲への引っ越しが始まった

▼ターレーと呼ばれる市場内の小型運搬車が臨時開放された整備中の環状道路を列を作って移動する姿が引っ越しの象徴として報じられていた。空の商品運搬車が移動する壮観な光景が、新市場の明日の躍動を予感させ、東京五輪・パラリンピック後の築地市場問題を表舞台から退場させていく象徴にも見えた。