2018年6月18日(月)

▼県庁担当になって初めての県予算の企画で取り上げたのが「医療と福祉のはざまで」だった。三十数年前の話である。特に狙いがあったわけではない。取材を進めていて県幹部から示唆されたのである。連携していかなければならない医療と福祉の間に溝がありすぎる、と

▼当時の精神科病院は、退院しても帰宅先のない患者でベッドの大方が占有されて医療コストが急騰。社会復帰のための中間施設が国主導で進められていた。医者側は、精神医療は自分たちの分野という意識とともに、長期入院患者の一掃は経営上の脅威。協力体制が鈍かった

▼「医高福低」は、医師免許所有者が保健所や健康部門のトップになる県庁でも引き継がれてきた。健康と福祉部門が一つになって部長を一般職が務めることが珍しくなくなってからも、構図そのものは変わっていないのではないか。15日の県議会一般質問で、小林正人議員が福祉医療費助成制度について質問した

▼身体障害者と精神障害者で支援状況が違いすぎるとして、精神障害者の受給要件緩和を求めたが、福井敏人医療保健部長は「制度を持続することが大切。給付と負担のバランスを勘案するなど、慎重に考える必要がある」。ゼロ回答。いびつな制度を長年運用してきた反省も、何とかしたいという熱意もない

▼小林議員が児童虐待防止をただした時の田中功子ども・福祉部長は「市の人材育成に寄与し、地域や警察、NPOなど関係機関と協力し、新しい児童相談体制を目指す」。意気込みはにじむ

▼医療と福祉を分断した県は溝の拡大へ再び歩き始めたようだ。