2018年6月17日(日)

▼カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞した是枝裕和監督に林芳正文部科学相が祝意を伝えようとして断られた。ブログでは「公権力とは潔く距離を保つというのが正しい振る舞いではないか」。林文科相もほっとしているのではないか

▼何しろ、死亡した母親の年金を不正受給していた事件が創作のヒントである。年金では足りない生活費を、疑似家族が万引をして補うというストーリーである。新学習指導要領で道徳教育を柱に据えた政府の責任者が「素晴らしいテーマでした」とも「よくできたストーリー展開」とも言えまい

▼日本だったら受賞対象になったかどうか。監督自身はインタビューで「社会から排除された人々」「見えない人々」を突き詰めていったと話している。林文科相、安倍晋三首相はもちろん、「自己責任」が主義の政府・自民党も見えはしまい

▼8日の日本公開から3日間で興行収入は6億円弱。早くも大ヒットの予感とか。主義はどうあれ、権威にはまず祝意をという文科相のいる国民ではある。養子縁組が盛んで血縁関係のない家族が普通の欧米社会では見えない人々ではなく、普通の家族のあり方が共感を呼び評価されたという説もある。芸術は映し出された社会と無縁ではないのだろう

▼鈴鹿市で58歳の無職男性が、同居の47歳の無職女性から3万円盗んで逮捕された。姿をくらましたため女性に通報され、コンビニで万引をしているところを捕まった。「出て行くのに生活費が欲しかった」と供述しているという

▼是枝監督なら2人の生きたどんな社会を描くだろうか。