2018年5月29日(火)

▼「捕らぬタヌキの皮算用」―本紙『まる見えリポート~Jサッカースタジアム整備』を見て、そんなことわざが頭をよぎったのは、実現をめざして奮闘する諸兄に対し、まことに不調法なことであった

▼「スタジアム準備会議」発足会合で、会長に就任した岩間弘県サッカー協会会長(岩間弘第三銀行頭取)が「スポーツを通じた地域活性化が重視されている。サッカーで実現したい」。県内3チームの「合併は意識していない」と語ってもいたが、県に提出した報告書に「オール三重で応援できる県民クラブ」創設をうたった。各チームに合併の文字が浮ぶのは当然。県からの退出を言い出すチームまで出ている

▼チームの意向を後回しにして、どれぐらいかかるかや、実現した場合の期待をあれこれ話し合っている構図をちょっと連想したのである。同じ皮でも、タヌキは高価だったのでこのことわざがあるという説と、タヌキは化かすからの二説がある。どちらも言い得て妙ではある

▼スポーツビジネスは難しい。純粋にスポーツ振興を目指しても、現実を抜きにしては優秀な人材は県外へ流出してしまう。現実ばかり目立ちすぎると大衆はそっぽを向く。サッカー熱では全国有数の県でJリーグ誕生に大きく遅れをとっているのはその二つの距離が大きく、融合への情熱が見られなかったからだろう

▼県内チームの競り合いや全国での活躍と、Jリーグ規格を満たすスタジアム整備のどちらが欠けてもJリーグ誕生は「捕らぬタヌキ―」になるのではないか。県がかつて体験したことのない産みの苦しみが求められる。