2018年3月31日(土)

▼「子どもを持つ可能性を奪うという今の時代では全く考えられない制度」と記者会見で鈴木英敬知事。「一方で旧法、その旧優生保護法は国が主導し、国が指揮監督をしながらやってきたもの」という言葉が続く

▼障害や精神疾患を理由に強制不妊手術に対し、27日のぶら下がり会見でも「当時は法律だったにせよ今では考えられない人権侵害」。「合法」だったということだろう。その翌日の県の独自調査発表で、昭和26―53年度だけで28件が、本人の同意なく不妊手術が実施されていたことが判明した。「(当事者に)寄り添い、丁寧な対応をしなければならない」では済まない気がする

▼優生保護法上の不妊手術は本人の同意と、保護者の同意を条件に県優生保護委員会の審査を経る場合とに大別される。本人の同意のない28件がすべて保護者の同意があったか。合法性が揺らいでいる

▼元医師の「母体保護のためだった」の説明も、妊娠中絶を繰り返す女性の負担防止と県は言う。正当性を印象づけていないか。優生保護法の目的は「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護すること」。後段が許されるのは経済的理由と性的暴行の場合だ

▼出産で「周辺の不幸は必然」などの審査会記録の発言が、県にはびこる優生思想をうかがわせる。被害者支援団体の要請に、厚生労働省は20年来「プライバシーの問題があり無理。被害者の方にはお気の毒である」

▼知事の「当事者に寄り添う丁寧な対応」発言がよく似ているようなのは気のせいかもしれないが。