2018年1月18日(木)

▼その名を聞いただけで、誰もが天啓に触れたようにひれふす。言葉の世界ではまさに神のごとき存在と言っても過言ではない広辞苑が、10年ぶりに改訂された第七版で修正の検討に迫られている。性的少数者を指す言葉として新たに収録した「LGBT」の説明を「多数派とは異なる性的指向をもつ人々」として、当事者らを嘆かせているらしい

▼よせばいいのにという気がしたのは、我が体験からだ。第一にレズビアン、ゲイ、バイセクシャルなど、注釈を入れようとすると文字が多すぎる。それ以上に、問題となったTの「トランスジェンダー」の意味がいまひとつ、よく分からないのだ

▼同性愛、両性愛など、LGBが性的指向を持つ人であることは分かる。が、Tについては、県人権施策基本方針の用語解説に「身体と心の性が一致しない。この中に、性同一性障がいが含まれる」。「性指向」ではなく「性自認」だと明記する。性同一性障害は法で定義されているが、では「含まれる」以外の「性自認」とはどんなケースか

▼県の用語解説は生物学的性別が「男か女」であることを前提としている。その上で、性同一性障害以外となると、生物学的男性が自らを男と自認し、女性も同じとなり、県が分類する「性的マイノリティー」に何をもって加えるのか。パラドックスに入り込んだようで「性指向」と「性自認」の違いというだけの説明では腹にストンと落ちないのだ

▼性的少数者は今やLGBTの枠では収まりきらなくなっているらしい。「神」たる者、移り変わりつつある言葉を軽々に載せるべきではない。