2017年12月28日(木)

▼最近の刑事ドラマは、違法捜査のできる刑事がヒーローとして扱われ、それかどんどんエスカレートしているようで胸が悪くなる。意外性を追求するあまりの現実遊離とテレビの前で一人慨嘆していたが、事実は小説より奇なりということか。県警捜査三課の男性警部補が、令状を得ずに、衛星利用測位システム(GPS)端末を使って捜査していた

▼「早く容疑者を検挙したくて」と話しているという。まさに刑事ドラマのヒーローと同じ。ルールに従う地道な捜査などはまだろっこしくて仕方ないのだろう

▼昭和60年、米連邦麻薬取締局がおとり捜査で広域暴力団の山口組幹部数人を逮捕したことがある。「そんなことをせずとも捕えられる」と批判的だったのが、最前線にいた後の警察庁長官の金高雅仁さんで、理由は日本の高い謙虚水準を維持してきた「取り調べの力」。「情理を尽くして犯人に真実を語らせる」

▼自供偏重ということだろう。外国の捜査幹部から「事後的捜査だけで現在進行形の犯罪の証拠を収集しない」と指摘されても意に介さなかったが、今は黙秘を続ける被疑者が増え、取り調べの力が通用しなくなった。だから、通信傍受法の対象拡大、司法取引導入など「法改正の意義は大きい」というのだが、ノウハウはないということだろう

▼警察庁自身が令状なしのGPS捜査を奨励し、令状取得へ方針転換し、それさえ最高裁で否定された。新しい捜査手法を「研究し、取り入れ、新時代にあった捜査力構築が求められる」と金高さん。道半ばというより、緒に就いたばかりということだろう。