2017年11月5日(日)

▼「ドローン」という名前が虫が好かないのは、首相官邸屋上に着陸させたり、伊勢志摩サミットでは条例で飛行禁止にしたり、テロの手段となるからではない。ファンだった米国のSFテレビドラマ『スタートレック』の敵役だったからだ

▼宇宙を恐怖に陥れる機械生命体ボーグの構成員の総称で、高度な文明の宇宙人を次々〝同化〟して機械と融合した生命体に変えていく。〝同化〟すると個々の意思はなくなり、脳に直結された通信装置ですべての情報を共有する全体の歯車の一つとなる。何らかの力で集合体から切り離されるとたちまち極度の不安に陥り、復活した通信装置へボーグからの呼びかけが入ると、夢遊病者のように引き寄せられていく

▼スマホと若者の現在と人間の未来を予言していたかのようだが、ドローンはもともと雄のハチのことで、羽音も称したことから遠隔操縦あるいは自律式の無人航空体も指すようになったのだろう。ボーグはハチの社会を擬したようであり、ドローンをメジャーにした最初のSF小説『未来の二つの顔』でも、人類と人工知能との戦争でどちらが勝つかをシミュレートするために製作したコロニーで作業する末端のシステムだった

▼県は不法投棄された廃棄物の規模を立体的に地図に描けるシステムをドローンに組み込んで廃棄物を測量するとともに不法投棄を監視していくという。災害対策など、これからますます頼りになる存在となり、多様な役目を託され大空を飛び回ることに違いない。敵役のイメージはない。テロ用としての規制は事が起こるまでのお預けとなる。