大観小観 2017年10月8日(日)

▼広告大手電通の労働基準法違反(長時間労働)事件で東京簡裁が求刑通り罰金50万円の判決を言い渡した日、NHK会長が過労死した女性記者の両親に謝罪した。規定を超える長時間労働をさせたとして、朝日新聞が中央労働基準監督署から是正勧告を受けたのは昨年12月。メディア界の〝三巨星〟がそろって指弾を受けたことになる

▼兄事した県幹部に昔、働き方について指摘されたことがある。自分らは毎日、一定のリズムで仕事をするが、君らはゴムひものように、事が起こればピンと張り詰め、終わると緩める。隙あらば緩んでばかりで、時間内と外の区別もしなかったが、長時間労働などとおこがましくて言えもしなかった。だから、県内で見る範囲だが、巨星らの仕事ぶりには舌を巻いた

▼昔のことだが夜八時すぎ、書店を冷やかしていたら朝日の記者が入ってきた。「抜け出してきた」という。仕事もないのに誰一人帰ろうとせず、机に向かっている。とても「お先に」と言える雰囲気ではないらしい。大変だなあと同情したが、管理職が記者の出退勤時間の記録を短く書き換えていたという話に重なる

▼総務部門から異動したというNHK幹部が昨年、三重労働局と報道機関との懇談会で、200時間超の残業時間が珍しくなかったのを、電通事件をきっかけに削減に取り組んだという苦心談を語って会場を沸かせた

▼報道機関側は、身につまされての苦笑いではなかったか。労働局側はおつきあいの笑いと受け取ったのだが、過労死を認定されて、慌てて削減したくせにという笑いだったのかもしれない。