2017年9月16日(土)

▼行政視察旅行に参加しなかったことで名張市議会から厳重注意処分を受けた市議が、名誉を傷つけられたと損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、二審の名古屋高裁が賠償を認めた判決について、亀井利克市長は「執行部があまり立ち入るべきものではない」。一審の津地裁は「処分は地方議会の自律権の範囲。司法審査が及ばない」と請求を退けていた

▼三権分立ということか。裁量の範囲ということでもあろう。が、名古屋高裁は「政治的信条を理由に市議は参加を拒否しており、参加の強制は基本的人権の制約になる」。憲法違反だというのである

▼団体内部の規律問題については司法審査が及ばない、とする部分社会の法理というのがある。地方議会はその適用を受けるというのが自律権の範囲という一審の判示だ。議会の懲戒処分には政争を露骨に反映したとしか見えないものも多いが、選挙の審判があることも行政や司法が介入を避ける理由

▼辞職勧告さえ受け入れられることの少ない地方議会の処分だ。厳重注意処分が「政治的信条を理由」に参加拒否する市議に「参加強制」させる効果があるかどうか。昭和35年3月の最高裁判決は地方議会の除名処分について、議員の身分に関わる重大事として取り消しの判断をし、同10月の同判決は出席停止処分について、内部規律は司法の権限外だとしている

▼名古屋高裁は後者の判例を引いて、市議の訴えに軍配を上げた。その解釈に「私の中で大きな差異」と細矢一宏議長。ことは名誉毀損から議会の自律権の範囲の変更という未知の領域への広がりをみせている。