2017年8月20日(日)

▼介護保険から切り離されて市区町村事業に移行した軽度の要介護者向けサービスの運営に、自治体の45%が苦慮していると、共同通信の調査。「ボランティアら担い手を確保できていないことが主な理由で、地域住民が支え合う仕組みづくりの難しさが浮かび上がった」。県の場合そうしたのは地域社会でも住民でもなく、国であり、県である

▼話は平成七年の阪神大震災にさかのぼる。市民団体の自発的公益活動が注目され三年後、特定非営利活動促進法(NPO法)が成立。県はNPO室を組織し、NPO法人の活動を奨励した。それまで非営利活動をしていたボランティア団体は、善意に見返りを求めるNPO法人を異端視したが、適正な報酬を得るから持続可能な活動ができるとするNPO法人は、ボランティア団体を時代遅れの遺物のようにみなし、県もその後ろ盾をして、NPO法人の勢いはよかった

▼サービスは有償とする介護保険の登場で、無償にこだわるボランティア団体は閉め出され、嫌けがさして福祉の現場を去った。高齢化の急速な進展は給付額を増大させ、改めて無償のボランティアの必要に迫られたが、一度途切れたボランティア活動の継承は修復が困難になっているのである

▼最近のボランティアグループは、どこかに行政や社会福祉協議会の意向を感じさせる。財政支援が活動の前提で純粋な善意でスタートするケースはめったにない。活動目的や内容も、似たり寄ったりになった

▼県も行事のたびに募集して便利使いするだけでなく、ボランティア活動家の育成に本腰を入れねばなるまい。