2017年7月17日(月)

▼教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏が、いじめで自殺者が出た大津市立中学校の第三者調査委員会の委員に就任した体験談を聞いたことがある。調査のため他の委員とともに訪れた学校で、校長に今一番の悩み、困っていることを尋ねたら「風評被害に悩んでます」と言ったそうだ

▼「目の前の子どもたちを考える方が重要です」と言った教師もいたという。授業見学や現場への案内を断られ、尾木さんらは激怒して要求を通したそうだが、一人一人は善良で家庭訪問も熱心な教師。断った理由は現場が学校外。また、授業の準備でそれどころではない―。大切の優先順位は校長、教師と尾木さんら三者三様なのだ

▼いじめ自殺に伴う第三者委と遺族とで、全国的に溝が深まる傾向という。自殺を複合要因と考えて問いただす専門家委員に対し、遺族は家庭への責任転嫁を意図している、あるいは学校側と口裏を合わせていると受け取るらしい

▼県総合教育会議でも、いじめは必ずあるとする前田光久委員に対し、山口千代己教育長(当時)は「なくならないと言ってしまえば保護者の責任は果たせない」と言って対立した感があった。事象の分析と自身の立場とが混同したからだろう。アンケート調査でいじめの実態は分かるという専門家もいた

▼思春期とは、自身どうしていいか分からない衝動が体の奥からわき上がってくる時期とも定義される。心身の変化が著しく、昨日の自分が今日の自分とは限らないし、挑み傷つくことは人間の成長に不可欠ともされている。いじめ撲滅は、教育と矛盾する危険も包含している。