2017年5月16日(火)

▼議長未経験者としては最長期数の舟橋裕幸氏が満を持しての県議会議長候補となる見通しという。「満を持す」は、史記・李将軍列伝が語源。狩りに出て匈奴の大軍に包囲された李広が兵士に弓を引き絞ったまま待機させ、自ら大弓で敵部隊長らを射抜き、退散させる。弓をいっぱいに引きしぼり、大軍に一気に攻撃をしかける機会を辛抱強く待つ兵士らの姿が浮ぶ

▼舟橋氏が六期二十数年、そんな猛き心を持ち続けて今日を迎えたかどうかは知らない。かつて津市長選への出馬が取りざたされ、断念したとの報道を見た程度。県議会での発信力を失うことを嫌う出身母体の県職労の意向も影響したといわれた。県立病院の組織変更では反対の先頭に立ち、採決では議場を出ている

▼鈴鹿市の元市長川岸光男氏も県議時代、市長選に意欲を示しながら出身労組の意向で断念。退職後、改めて出馬している。政治家の心は一様ではないが、反発するにしろ獲得しようとするにしろ、権力に対し猛き心を失っては政治家として肝心の何かが欠けている気はする

▼役員選挙で期数が会派を超えて物を言うのは珍しいことではない。ルールが法や条例で確立している行政と違って、議会を縛るルールはその時々の勢力、時勢で変わる。唯一確かなのが期数で、これに対する姿勢は必ず自身にもはね返ってくるからだ。ポストを巡り自会派から候補者を立てるかどうかの重要な判断材料だ

▼「満を持す」の「満」は満ちることを意味し「機が熟す」と同義にも解されるが、権力掌握や政争を見極めながら、弓を引き絞っていたと思いたい。