2019年3月20日(水)

▼合併前の紀宝町で町長をしていた岩本辰次さんから呼び出しを受けたのはもうどのくらい前になるか。叙勲表彰の時だったか、額に入れた記事が送られてきて料金を請求された。どういうことだというのである

▼むろん本紙に覚えはない。が、関係ありそうな社名を名乗り、新聞掲載を知らせ祝福してきたという。関係する団体かなという思いが頭をよぎった。代理店がそんな商売をして迷惑したという話を他紙の記者から聞いていたことがあった

▼掲載記事を送ってもらったと、逆に感謝されて戸惑ったことも。この節は、広告会社を名乗って趣味の短歌や俳句を褒めて新聞・雑誌への掲載を誘い、高額の掲載料を要求されたトラブルが目立つという(本紙『あんしん回覧板』)。掲載料10万円は古い思い出の約3倍だが、支払えば掲載してくれるのかどうか。確実に掲載されるのなら、トラブルにならぬケースもあろう

▼もっとも、オンライン上の怪しげな学術雑誌「ハゲタカジャーナル」がこのところ急増中という。掲載料を支払えば内容を問わず掲載してくれる。外形的に実績を整えて地位を守りたい研究者や、論文数を国などの助成金確保の説得材料にしたい研究機関が利用し、持ちつ持たれつの関係でもあるらしい

▼国が研究助成金を成果主義にシフトしたことに伴う研究機関の運営費不足、研究者の身分不安定のしわ寄せで、論文ねつ造と同根なのだろう。「褒め言葉にご用心」と『あんしん回覧板』は警告する。褒められたい、認められたいという人間共通の心理のスキを突く巧みさも背景にあるに違いない。