2019年2月14日(木)

▼新年度県予算案の呼び名は「深根固柢」だと鈴木英敬知事が命名した。「基礎を固める」という老子の言葉という。今年はもう一つ中国の故事が出てきた。「防災減災パッケージ」なる施策集の名称が「観往知来」。こちらは老子、荘子とともに道家の代表的著作、列子の引用という

▼「聖人は出づるを見て以て入るを知り」とある。過去のことを十分観察して将来のことを推察するの意味。これとは逆の「入るを量りて出ずるを為す」はやはり中国故事で財政論の心得とされる。禁じ手続きでそうはいかない県財政を防災で言い訳しているようでおもしろかった

▼昨年が「安心なくして希望なし予算」だった。一昨年は「奮励努力予算」でその前が「緊褌一番予算」。2年続けて緊縮財政対策に頑張ったが、昨年はにっちもさっちもいかなくなり、県民の安心へ目先を変え、県の基礎に転じた。そんな知事の思いの変遷が、命名に表れているような気がした

▼「基礎」と言っても、国が支援策を打ち出した防災面に限られていることはいうまでもない。分かりやすかったのも知事の命名のだったが、今年は先の2つとも、手持ちの故事ことわざ辞典になかった。ネットで調べなければならないのも今流か。けむに巻いているつもりではあるまい

▼「緊褌一番」「奮励努力」は、知事の真摯な姿勢がにじみ出てくるような言葉だった。「安心なくして―」は、挑戦なくして果実なしを連想させる。道家思想は過酷な現実から自然への復帰、逃避的な性格を帯びやがて神仙の術と結びついて道教の成立へ。神頼みではあるまいが。