【伊勢】令和15年に予定される伊勢神宮の第63回式年遷宮で、一連の祭典の最初となる「山口祭」と「木本祭(このもとさい)」が2日、三重県伊勢市の伊勢神宮内宮と外宮で古式にのっとり行われた。
式年遷宮は、20年に一度、社殿を造り替えて調度品を新調し、ご神体を移す神宮最大の儀式で、約1300年前に始まったとされる。遷宮に関連する祭典の幕開けとなる山口祭は、社殿の造営に使う御用材の伐採作業を始めるにあたり安全を祈願する祭儀で、内宮では神路山、外宮では高倉山の麓を祭場に行われた。
雨の中、内宮では太鼓の音を合図に午前8時から始まり、久邇朝尊(くにあさたか)大宮司をはじめ、斎服を着けた神職や造営工事に携わる小工(こだくみ)ら約80人が奉仕。祭儀に奉仕するけがれのない人「物忌(ものいみ)」として、童男の千秋季誉(せんしゅうすえよし)君(8つ)=四郷小3年と、童女の宮川結さん(8つ)=進修小3年=の2人も装束姿で加わった。正宮で拝礼した後、別宮を遙拝。五丈殿で、祝儀の食事「饗膳(きょうぜん)の儀」が行われた。
続いて、青い斎服の素襖(すおう)と烏帽子(えぼし)姿の小工が、五色の幣(みてぐら)を掲げ、祭列は神路山の祭場へ向かった。
祭場では四隅と中央に五色の幣が立てられ、お供え物をささげて神職が祝詞を奏上。「山口(やまのくち)に坐(ま)す大神」にご用材を切り出すことを申し上げた。その後、物忌が神聖な鍬(くわ)でささげ物忌物(いみもの)を埋め、鎌で草木を刈るしぐさをして、刈り初める儀式をした。
外宮では正午から同様の儀が開かれ、高倉山の祭場は、物忌として童女の工藤千鶴さん(8つ)=厚生小3年=が奉仕した。
時折雨が強まる中、大役を果たした千秋君は「雨にも負けず、風にも負けず頑張りました」、宮川さんは「きれいな装束を着てご奉仕でき、楽しかったです」、工藤さんは「大雨の中、大変でしたが一生懸命頑張りました」などと話した。
祭列の様子は一般の参拝客も見守った。岡山県倉敷市から毎月1日に神宮参拝しているという崇敬者の富山義賢さん(49)は「印象深かったのは祭典もだが、この大雨。遷宮の祭典の最初の日に、空気も土地もきれいになる。ありがたいと思った」などと話していた。
夜には、木本祭が内宮、外宮で営まれた。木本祭は、正殿の床下中央に建てられる心御柱(しんのみはしら)の御用材を伐採するにあたって行われる儀式。秘祭とされ、両宮とも神域の山中にある祭場で夜間に行われる。
内宮では雨上がりの澄んだ空気の中、祭典に奉仕する神職や物忌らがおはらいで身を清め、ちょうちんで辺りを照らしながら祭場へ向かった。
祭場内の儀式は非公開。供え物をささげ、「木本(このもと)に坐(ま)す大神」に木を切ることを申し上げた後、物忌がおのを使い、「心御柱(しんのみはしら)」となる用材を切るしぐさをする。伐採した木は、白布などで包み、両宮域内に安置されるという。
今後、ご神体を新殿に移す令和15年の「遷御(せんぎょ)」に向け、8年の歳月をかけて祭典や行事が行われる。