6日告示の三重県の鳥羽市長選には、元市教育長で新人の小竹篤氏(69)=安楽島町=、3選を目指す現職の中村欣一郎氏(66)=安楽島町=、元市議で新人の山本哲也氏(46)=屋内町=(50音順)の3人が立候補を表明している。2040年には、約1万6千人の市人口が1万人になるといわれている市の将来像をどう描くのか。地域活性化に向けた市の取り組みを探った。
市が令和6年度から、本格的に進める鳥羽駅周辺エリア再生事業。その対象範囲は、飲食店や小売店が立地する岩崎通りや錦町通り周辺の中心市街地▽佐田浜、ミキモト真珠島、鳥羽水族館エリア(鳥羽駅―中之郷駅間)▽鳥羽城跡や城山公園、旧鳥羽小学校を含む鳥羽城址地区―となっている。
鳥羽駅周辺エリアには観光施設が多く、駅やバスターミナル、定期船乗り場が集まる交通の結節点であることから、市は地域経済活性化において鳥羽の魅力が詰まったエリアと位置づけており、市の担当者も「年間約400万人の観光客が最初に訪れる重要な場所」と話す。
一方で、同エリアはかつて城下町として栄え、その後、多くの観光施設が整備されたことで各地から訪れる観光客でにぎわう地域となったが、現在は人口減少や少子高齢化が進み、空き店舗や空き家が増えていることが課題となっている。
市は、有識者や市の関係団体でつくる「鳥羽駅周辺エリア再生ビジョン策定委員会」と、若手の市職員や市関係団体でつくる「鳥羽駅周辺エリア再生ビジョン検討部会」を設置。同エリアの目指すべき方向性や未来の姿を明文化したビジョンを策定後、伊勢神宮式年遷宮が行われる令和15年の一部開業を目指し、事業計画の設計や工事を進める予定という。
3日に市内で開かれた市長選立候補予定者の公開討論会では、駅周辺エリアの再生について、3氏それぞれが持論を展開した。
小竹氏は、駅前にある平成20年に閉館した商業施設「パールビル」に触れ、「佐田浜に17年放置された廃墟があるのはおかしい」と強調。「駅前再開発は大きなプロジェクトなので国の補助金や企業の融資を得る必要がある。決断力と実現力を発揮して自分の政治生命をかけるつもりでやっていきたい」と述べた。
中村氏はパールビルには触れず、「式年遷宮やリニア開通にタイミングを合わせていく大事なまちづくりなので、市民の声を聞かせてもらい、軌道に乗せていきたい」と話した。
山本氏は「鳥羽の玄関口といわれるエリアにパールビルが放置され続けているのは、鳥羽の元気がなくなってきている象徴になる」と述べ、「駅前再開発は稼ぐまちへのきっかけづくりにしたい。買い物や交通機能を充実させて利便性を高め、市民に愛されるエリアにしたい」と力を込めた。
駅前周辺のまちづくりを加速させるためには、課題となっている空き店舗・空き家対策が急務となる。鳥羽旅館組合の迫間優子理事長は「鳥羽に足を運んでもらえるように景観をきれいにし、歩いても楽しい活気あるまちになれば」と話す。「式年遷宮に向けて近隣市町に後れをとらないように取り組んでもらいたい」と新市長に期待を込め、選挙戦の行方を見守っている。