伊勢新聞

観光の「地域引力」高めて 静岡県立大の岩崎氏、伊勢新聞政経懇話会で講演 三重

【伊勢新聞社の政経懇話会で講演する岩崎氏=津市新町のプラザ洞津で】

伊勢新聞社の政経懇話会5月例会が14日、三重県津市新町のプラザ洞津であり、静岡県立大経営情報学部教授・学長補佐・地域経営研究センター長の岩崎邦彦氏が「地域を元気にする観光のブランドづくり」と題して講演した。岩崎氏は「強いブランドには引力がある。観光客を増やそうではなく、地域引力を高めよう」と述べた。

岩崎氏は観光のブランドづくりについて、従来のプロモーションやPRなどの「押す力」ではなく消費者や観光客を引きつける「引く力」が重要だと強調。一例に京都を挙げ、有名な広告キャッチフレーズ「そうだ京都、行こう」を例示。「自治体の観光事業計画には『来て下さい』が多いが、『行きたい』が求められている」とした。

ブランド力を高めるには「消費者の中に、明快なブランドイメージが浮かばなければ選ばれない」と指摘。消費者1000人調査の中で、強い地域ブランドの条件一位が「明快なイメージ」だとした。都道府県では京都、北海道、沖縄を挙げ、それぞれ「歴史文化」「自然と食」「青い海」という明快なイメージが想起されているとした。

一方で、例えば佐賀県、埼玉県、群馬県のイメージは「特になし」だったとし、「行きたい観光地では、イメージが浮かばない地域より、浮かぶ地域が選ばれる傾向がある」と強調した。

消費者に明快なブランドイメージを認識してもらうには、価値性▽独自性▽共感性|が重要だと指摘。「他県の成功事例をまねても勝てない。大切なものは足元にある」と述べ、地域資源の魅力を再発見する必要性も説いた。

また、「観光地+食」の満足度が高いことを示す一方、「ならではの食」との出会いもカギを握ると強調。カツオの漁獲量一位は静岡県だが、消費者調査で「カツオ」でイメージするのは高知県が圧倒的だとし、「生産量が多いからブランド化できるのではない。食との出会いの場がどれだけあるかが重要だ」と話した。

岩崎氏は専攻はマーケティング。とくに地域や中小企業に関するマーケティングを主な研究テーマとし、これらの業績により日本地域学会賞、日本観光研究学会賞など受賞。静岡県地域づくりアドバイザーなども務める。