伊勢新聞

2025年1月9日(木)

▼特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺の増加に対し、県警幹部職員への「新たな捜査手法や知識を駆使し、積極的な検挙活動を進めてほしい」という難波正樹県警本部長の訓示は、大方の県民の願いでもあろう。よくぞ言ってくれたと喝采するか、県警トップがそんなことを言うなんて世も末だと思うかは別にして

▼新しい形の犯罪が起こるたびに捜査が後追いになるのは仕方ない。犯罪が起きてからが仕事で、未然防止は職務にあらずが警察のしきたりと長くいわれてきたからである。ストーカー被害やネット犯罪などの横行で予防対策が重要案件となり、いじめ・虐待問題で、民事にも踏み込まざるを得なくなった

▼守備範囲が大きく広がるほど陣容が充実されるものでもあるまい。高度な専門知識が求められるとなれば、なおさらだろう。県警本部長の言葉は、痛切な悲鳴にも聞こえるのである。コンピューター時代を迎えた昭和40年代初めから、犯罪とセキュリティー対策は“いたちごっこ”と言われてきた

▼どんな厳重なセキュリティー対策も必ず破られ、また新たな対策が求められる。量子技術がこの流れにピリオドを打つのかどうかはともかく、特殊犯罪で用いられるSNS(交流サイト)の技術自体は、それほど高度なものとは思われない。人の心理を操る犯罪心理学の分野だろう。「新たな捜査手法」は、これまでの捜査手法の延長線上にあるのではないか

▼身近な技術を取り込んで続々登場する新たな犯罪に対し、打ち破る捜査手法の新たなアイデアが待たれる。