伊勢新聞

2024年12月30日(月)

▼ラグビー国内最高峰リーグ、リーグワン一部の三重ホンダヒートが主要な活動拠点を鈴鹿市から栃木県宇都宮市に移転することになった。本紙企画「一年を振り返って」を読んで、いささか喪失感を覚えた

▼3年後の日本一を目指したチームづくりで県外転出を決断した三重ホンダヒートが「発祥の地」鈴鹿市をはじめ三重でも地域交流を継続していきたいとしているのに対し「県の反応の鈍さも県外転出に拍車をかけたとする声もある」の一節に目が釘づけになる

▼新天地への希望にあふれた出発というより、失望感を抱えて出て行く情景が浮かぶ。原因は詳述されている。主たるホームスタジアムのスポーツの杜鈴鹿(県営鈴鹿スポーツガーデン)は、規模が小さく、サッカーのJ1基準を満たす球技専用スタジアムではない。県内にJ1チームが育つことは施設の制限からも不可能に近い

▼県は県ラグビー協会と三重ホンダヒートとの3者でホームタウン包括連携協定を結んだものの、施設整備の要望には耳を貸そうとしなかったとみえる。スポーツガーデンは鈴鹿市郊外に位置して公共交通機関からのアクセスが悪く、自前でシャトルバスを運航したが、観客動員数が限定的になるのはやむを得まい。施設状態も良好と言えず、県は外部監査で修理を指摘されたこともある

▼建設時にはJリーグ公式基準を目指したが、基準決定の遅れで見切り発車した。伊勢市の県営総合競技場も同様。県はアスリート第一とはほど遠い風土なのだ。かくて、県内唯一のプロチームもいなくなる。