-製造と販売、1人で 新商品試食は夫と母に- 「atelier・K」代表 中西佳代さん

【「地域の方々に長く愛される店を目指します」と話す中西さん=鈴鹿市加佐登で】

 平成29年、鈴鹿市加佐登の実家敷地内に「アトリエ・ケイ」ベイクショップをオープンした。東京都の辻製菓専門学校を卒業後、神奈川県のベーカリーショップなどで腕を磨き、製造と販売を1人でこなしながら創業から3年目を迎えた。

 オープン前から、市内外で開催されるハンドメイド作家らのイベント「手作りマルシェ」に出店して、参加者らに「アトリエ・ケイ」開店を呼び掛け、30歳までに自分の店を持つという夢をかなえた。現在も、定休日にはマルシェでの出店を続けている。

 週に4日間、水曜日から土曜日まで営業している。工房と調理室、カウンター席を備えた約50平方メートルの店舗には、食パンや菓子パン、調理パンなど20種余りと焼き菓子が並ぶ。好みの飲み物と焼き立てのパンや作りたてのサンドイッチを楽しむこともできる。

 早朝3時から仕込みを始め、10時の開店時間には食欲をそそる香りとともに焼き立てパンがずらり。県産小麦「アヤヒカリ」と北海道のブランド小麦「春ヨ恋」、国産バター、仏産の岩塩などの素材にこだわっている。調理パン以外の全てのパンに卵を使用せず、卵アレルギーの人にも喜ばれている。

 人気商品は、自慢のカスタードクリームが詰まった「フレンチトースト」と、フランスパンに粒あんとバターをたっぷりサンドした「あんバター」。「ボリューム満点で大満足」「これが食べたくて」と、午前中に完売してしまうこともあり、予約して来店する常連客も多いという。

 鈴鹿市で兼業農家の両親の下、3人姉妹の末っ子として生まれた。中学時代、好きだったテレビ番組「TVチャンピオン」で、市内のパン屋さんが優勝したのを見て、パン職人に憧れた。進学した神戸高校2年の時、社会人だった姉と一緒にパン教室に通うようになり、進むべき道が定まった。

 大学進学を勧める担任と、姉たちと同じように進学させたかった両親を説き伏せ、東京の製菓専門学校への入学を認めてもらった。「佳代のやりたいことをやらせてあげよう」と、後押ししてくれた姉の言葉がうれしかった。

 市内の製パン会社に勤務するパン職人の夫大介さん(33)と長女ひなたさん(7つ)、長男颯良さん(3つ)の4人家族。2人は学校や保育園から戻ると、世話をしてくれる母貞子さん(68)の家に行く前に、店に寄ってその日の出来事を話すのが日課になっている。

 子どもたちはそろってパンよりご飯が好きで、新商品の試食は夫と母が担当している。「もっと柔らかい方がいい」「見た目を工夫して」などの意見に沿って改良を重ね、2人のOKが出ると店頭に並べている。

 「パン作りを天職として同じ道を歩む夫と、今はそれぞれの場所で働いているが、いつか一緒にやる日がくるかもしれない」と話し、「今後は、モーニングやランチの提供、焼き菓子の充実などを目標に努力し、地域の方々に長く愛される店を目指します」と目を輝かせた。

略歴: 昭和61年生まれ。平成16年調理師免許取得。同17年辻製菓専門学校卒業。同年ベーカリーショップ「ブレドール」入社。同29年「アトリエ・ケイ」ベイクショップ創業。同年鈴鹿商工会議所入会。