-花に真心込めて 6歳から生け花、腕磨く- フラワーショップ「花やの六さん」社長 奥田誠さん

【「1輪の花がもたらす笑顔の輪を全国に広げていきたい」と話す奥田さん=津市寿町で】

津市寿町のフラワーショップ「花やの六さん」は明治20年代に、曾祖父の六衛門さんが同市東丸之内で創業した生花店「花六」が前身。昭和63年、父六幸さん(73)が独立開業し、平成26年に会長に退いた父から経営を引き継いだ。店舗での販売とネット販売、出張ディスプレー、葬儀の生花祭壇など、北中勢地区を中心に事業を拡大している。

「花がもたらす喜びを真心込めて」をモットーに、より充実したサービスを提供しようと開業30周年を機に今春、店舗をリニューアルした。1階は店舗、2階を作業場とし、外観は自らデザインを手掛けた全面木造りにした。訪れる人々の、どんな要望にも応えられる豊富な品ぞろえが自慢だという。

津市で2人きょうだいの長男として生まれた。忙しく働く父の背中を見て育ち、「大きくなったら花屋になる」と決めていた。6歳から生け花を習い始め、中学卒業まで続けて2級家元免許を取得した。「花を持って歩いていても、皆が花屋の息子と知っていたのでからかわれることはなかった」と振り返る。

中3の時、父親から「将来は花屋になるか」と聞かれ、即座に「なりたい」と答えた。それを機に、父は「花六」から独立して開業した。久居農林高に進学したが、両親のあまりの忙しさを目の当たりにし、少しでも役に立ちたいと、勉強が嫌いだからという理由をつけて2年で中退、店を手伝うようになった。

その後、店が軌道に乗り始め、従業員が雇えるようになったことから、父の勧めで京都の葬儀専門の生花店で修行を始めた。親方の下で、50人ほどの先輩らと遺影を引き立たせるための生花祭壇の基礎から応用までを3年半学び、腕を磨いた。22歳で「花やの六さん」に入社し、新設した葬儀部門を任された。

全国各地のバラやランなどの生産者を訪ねて、花の大きさや発色、日持ちなどの品質をチェックし、京都の生花卸売市場やネットの競りで買い付ける。来店者に花を選ぶ楽しさ、贈る喜びを感じてもらうには、自信を持って勧められる花々を取りそろえることだと考えている。

店内には、生花だけでなくプリザーブドフラワーやドライフラワーなど、スタッフ手作りのアレンジメントも並び、お気に入りの商品をすぐに買い求められる。また、それらを参考に予算や好みに合わせて注文することも出来る。

ホテルや企業、店舗の出張ディスプレーや、斎場と連携した生花祭壇造形では、遺族の要望に沿って故人の生前の趣味だったゴルフや車、釣りなどをモチーフにした祭壇を提案している。

経理と商品開発、店舗スタッフとして共に働く妻高代さんと、長男六史さん(21)、次男六弥さん(19)、三男六三朗さん(15)の5人家族。「子どもたちが幼いころは忙しく、店も子育ても妻に任せっきりだった。妻がいなかったら店はつぶれていたでしょう」と笑う。

花は喜びを何倍にも増やし、悲しみを和らげてくれる―。「15人のスタッフと共に社会に必要とされる企業を目指し、1輪の花がもたらす笑顔の輪を全国に広げていきたい」と目を輝かせた。

略歴: 昭和48年生まれ。平成2年久居農林高校中退。同3年京都府「花幾商店」入社。同7年「花やの六さん」入社。同25年津青年会議所理事長就任。同26年「花やの六さん」社長就任。同29年安濃津よさこい組織委員会理事就任。