-家庭で育メンぶり発揮 次世代モビリティも視野- 「ヒシキワークス」社長 日紫喜大介さん

【「次世代モビリティの全国展開を視野に、新たな可能性に挑戦し続けたい」と話す日紫喜さん=いなべ市員弁町で】

 大手自動車販売会社勤務を経て独立し、平成20年にいなべ市員弁町で自動車販売・整備会社「ヒシキワークス」を創業した。同25年、民間車検場の認可を受けて株式会社とした。「技術と誠意で顧客の安心と安全を守る」という精神の下、社員5人とともに業績を伸ばしている。

 顧客から車の異音や異常振動などの不具合の詳細を聞き、慎重に原因を特定する。修理は、この先長く乗るのか、乗り換える予定があるのかを聞いて新品か中古の部品を使うかを判断し、必要最小限に抑えた見積額を提示する。

 中古車を乗り継いでいた顧客にメンテナンスや保険を完備した新車リースを提案して「諦めていた新車に安価で乗れてありがたい」、自損事故を起こした顧客には「車両保険に入ってなかったが安く直してもらって助かった」と感謝されている。「お客さまの笑顔が何よりの励み。さらに誠心誠意尽くしていきたい」と話す。

 いなべ市で3人きょうだいの長男として生まれた。幼少時から人懐っこい性格で友だちが多く、小学校の卒業文集に担任の先生から「ムードメーカーでいつもクラスを明るくしてくれた」とコメントがあった。小2から剣道を始め、中学では剣道部がなかったため3年間バスケットボールに打ち込んだ。

 国立鈴鹿高専に進学。機械工学科で熱力学や流体力学など機械工学の基礎から応用までを学ぶ傍ら、剣道を再開し3年生で2段を修得した。4年生になった頃から、将来は自動車整備に携わりたいと思うようになった。両親を説得して中退し、愛知自動車整備専門学校に入学した。

 車の構造や機能を学び、実技では車体各部の分解・組み立てを繰り返した。2年間の学びで国家2級自動車整備士資格を取得。卒業を前に、車の故障箇所を探して修理する早さを競う恒例の技術大会で優勝を果たした。「高専での基礎知識習得が役立った」と振り返る。

 卒業後、四日市市の大手自動車販売会社に入社。独立・起業を目指して8年間、車検整備と修理の腕を磨いた。在職中に蓄えた給料で整備に必要な道具を買いそろえ、自宅ガレージで開業した。口コミで依頼が増え、半年ほどで1人ではこなせなくなり、従業員を増やした。

 妻と生後2カ月の長男の3人家族。出産に立ち会い長男を腕に抱いた時は感動で涙が止まらず、妻と息子を命懸けで守り幸せな家庭を築こうと心に誓った。家ではミルクを飲ませたり、おむつを替えたりと育メンぶりを発揮している。「片時もそばを離れたくない気持ちでいっぱいだが、仕事はしなければ」と目を細める。

 3年前から青年経営者らの研修塾に通うようになった。若者に敬遠されがちな整備や土木建築などの業種のイメージを刷新して人材確保につなげるため、働き方改革の必要性を学んでいる。残業や休日出勤を最低限に抑え、育児中の社員の急な早退や休暇取得を理解し、働きやすい職場づくりのための改革を実践している。

 板金塗装、点検整備、車検、新車・中古車販売、損保代理業、カーリースやレンタカー業に加え、昨年から名古屋市の「BLAZE」が開発した折りたたみ式電動バイクや電動ミニカーなどの北勢唯一の代理店として販売を開始した。

 「電動バイク・ミニカーなど、より効率的で快適な移動手段となる次世代モビリティの全国展開を視野に、新たな可能性に挑戦し続けたい」と目を輝かせた。

略歴: 昭和52年生まれ。平成10年国立鈴鹿工業高等専門学校中退。同12年愛知自動車整備専門学校卒業。同年国家2級自動車整備士資格取得。同年大手自動車販売会社入社。同20年「ヒシキワークス」創業。同31年いなべ市商工会青年部長就任。