-好きな物に囲まれた人生 対面販売にこだわり続けたい- メンズ・レディースセレクトショップ 「ペリカンハウス」社長 林秀信さん

【「直接手渡しができる対面販売にこだわり続けたい」と話す林さん=津市大門で】

津市大門の「ペリカンハウス」は、昭和54年に妻ひろみさん(62)と同市東丸之内で創業したレディース・カジュアルウェアの店「ペリカン」が原点。2年後に四日市、4年後には名古屋に進出、現在は東海3県と兵庫県に合わせて10店舗を展開している。

津市一身田でタオル製造業を営む両親の下、姉と2人きょうだいの長男として生まれた。父母は早朝から工場で忙しく働き、休日に家族そろって出掛けた思い出はない。「いつも暗くなるまで友達と遊び回っていた」と幼少時を振り返る。

一身田小から高田中学に進み、両親の期待を受けて受験勉強に励み、津高校に合格した。津高校は自由な校風で制服がなく、私服での通学だった。当時、若者の人気ブランドだった「VAN」の洋服が欲しくて、友人らと名古屋の百貨店によく出掛けた。「貯めていた小遣いで気に入ったセーターを買った時はうれしかった。勉強よりファッションに関心があった」と懐かしそうに話す。

津高校から神奈川大経済学部に進んだ。2年生の時、70年安保闘争に突入し、学生運動の拠点だった同大は2年余り封鎖され登校できなくなった。有り余った時間を横浜の地下街にある「VAN」の小売店でのアルバイトに費やした。3年間で、仕入れから販売までを任されるようになっていた。

「VAN」本社の営業担当者の勧めで入社試験を受け、卒業後は正社員として勤務するようになった。26歳の時に父が亡くなり、母が跡を継いだが2年後に工場を閉めた。その後、孫の顔を見に何度も静岡まで来てくれるようになった。かわいがってくれる母の傍で子どもたちを育てようと、2人目の子どもの出産を機に家族4人で津市の実家に戻った。

これまで培った経験を生かし、ひろみさんとレディース・カジュアルウエアの店「ペリカン」を開業。2人で選び抜いた国内外ブランドの洋服を仕入れ、販売するようになった。4年後には、メンズ・レディースウエアから靴、バッグ、アクセサリー、生活雑貨まで世界各国のブランドを取り扱う「ビームス」の中部地区初の代理店となり、東海3県を中心に店舗を増やしてきた。

直営店4店と「ビームス」販売代行店合わせて10店舗、約150人のスタッフには、「お客さまの立場に立ち、作り手の思いが伝わる接客に努めよう」と話している。「好みを理解して勧めてくれるのがうれしい」「スタッフに勧められて、今では色の冒険が楽しみ」など、スタッフの提案を喜ぶ声が多く聞かれる。

季節ごとのトレンドはもちろん、永く愛され続けているスタンダード商品も取り扱っている。また、洋服だけでなく、1人1人のライフスタイルに合った生活雑貨も紹介している。津市大門の本店2階には、買い物の合間にティータイムを楽しんでもらえるようカフェを併設している。

「妻と2人3脚でスタートして38年。振り返れば、好きなものに囲まれた幸せな人生です。今後は後継者を育て、少しずつでも夫婦それぞれの趣味を楽しむ時間を増やしたい」と話す。「今やインターネットで何でも買える時代ですが、お客さまの信頼を得て、良いものをお値打ちに、直接手渡しができる対面販売にこだわり続けたい」と語った。

略歴:昭和24年生まれ。同46年神奈川大経済学部卒業。同年VAN・JACKET入社。同54年ペリカンハウス創業。