-夫婦二人三脚で「恩返し」 食材にこだわり、家庭的接客- 「Restaurant Asakura」オーナーシェフ 浅倉孝幸さん

【「夫婦二人三脚で、地元の方々に長く愛される店を目指します」と話す浅倉さん夫妻=津市大門で】

 津市大門の伊料理店「レストラン アサクラ」は、平成29年に開業した「スティーレ」が前身。今年7月のリニューアルオープンに合わせて店名を「レストラン アサクラ」と改めた。地元特産の肉類、旬の魚介類、契約農家から取り寄せる自然農法の野菜、本場イタリアのワインやチーズなど、こだわりの素材を使った料理とアットホームなおもてなしで来店客を増やしている。

 日本料理店のような純和風のたたずまいの外観。モノトーンの落ち着いた雰囲気の店内にはカウンター席とテーブル席合わせて30席がゆったりと配置されている。昼はスープ、サラダ、自家製パンと好みのパスタが選べるパスタランチが人気。夕食はオードブル、肉・魚料理、パスタ、ピザなどの一品料理からコース料理まで楽しめる。

 調理師でソムリエの資格も持つ妻愛さん(35)が、お客さまの好みや予算を聞きながら、イタリアをはじめフランス、オーストラリアなど10カ国余の自然農法ワインの中から料理に合ったものを提案している。ピザやランチボックスなど、テイクアウトメニューもある。

 ランチタイムは主婦層を中心に女性客が多く、夜は会社員や女子会、家族連れなどでにぎわう。「おいしかった。今度は夕食に来たい」「ワインって奥が深いですね」など、来店者の声掛けがうれしいと話す。

 大分県竹田市で3人きょうだいの長男として生まれた。小3から近くの剣道場に通い始め、中3の時には、剣道部主将として県央地区大会個人の部で3位入賞を果たした。進学した県立高校の剣道部には中学時代から練習に通い、厳しすぎる顧問の指導を見てきたため入部をためらった。「剣道から逃げた後は自分に甘くなり、高校の3年間は遊びまくって両親に心配かけてばかりだった」と振り返る。

 将来の明確な目標を持てないまま、卒業後は福岡市の専門学校で公務員試験受験のために学び始めたが長続きせず、配送のアルバイトで生活するようになった。3年たった頃、祖父が脳梗塞で倒れたと母から知らせがあり実家に戻った。

 祖父の介護の傍ら、地元旅館のフロントで働き始めた。三重県鳥羽市から同旅館に研修に訪れたホテルオーナーの子息に接客ぶりを買われて、望まれるまま鳥羽のホテルに転職した。その後、伊勢市のレストランオーナーと出会い、接客と厨房(ちゅぼう)補助の仕事に再転職したことで、ようやく自身のやりたいことを見つけた。

 料理に満足して帰って行くお客さんの姿に、いつか自分の店を持つことが目標になり、無我夢中で料理の修業に励んだ。その頃、同じ目標を持ってフレンチレストランで働く、埼玉県出身の愛さんと結婚。2年後に「スティーレ」を開業し、2人の夢をかなえた。

 妻と長男有甫さん(4つ)と長女未幸さん(2つ)、次男一生李さん(2ヵ月)の5人家族。育児は夫婦で分担しながら、従業員らと店を切り盛りしている。「日々成長する子どもたちの姿がエネルギーの源。この子たちのためなら何でもできる」と話す。

 今はコロナ感染拡大防止のため、定員の半数ほどしか受け入れられない状況で、1日も早いコロナの終息を願っている。「多くの方々に支えられて今がある。その恩返しの意味でも、夫婦二人三脚で味の追求と空間作りにもより一層励み、地元の方々に長く愛される店を目指します」と語った。

略歴: 昭和59年大分県生まれ。平成15年大分県立竹田高校卒業。同18年旅館「翡翠の庄」入社。同23年伊勢市の「伊料理店」入社。同29年「スティーレ」開店。同年津商工会青年部入会。令和2年「レストラン アサクラ」に改名してリニューアルオープン。