-天職と確信し、独立 美と健康、癒しの場に- 「HIVE(ハイブ)」代表 伊藤栄紀さん

【「美と健康、癒やしの場として、居心地の良い空間づくりを追求したい」と話す伊藤さん=津市桜橋の「HIVE」で】

 津市桜橋の美容室「HIVE」は、お客さまもスタッフも輝く美容室をコンセプトに、平成11年に同市栄町で創業した。同16年に桜橋に拡張移転し、今年7月には同市大谷町に姉妹店「Koti by HIVE」をオープンした。

 津市半田で2人兄弟の長男として生まれた。小3から地域のソフトボールクラブに入って練習に打ち込み、6年生でクリーンアップの一角を担う3番打者として、津大会に出場した。「当時の津球場は、小学生にとっての甲子園だった」と懐かしむ。

 修成小、橋南中を経て久居農林高に進学。高1から通っていた美容室の男性美容師の技術と人柄に引かれ、将来は美容師になりたいと思うようになった。卒業後は市内のヘアサロンに就職し、シャンプー、ロット巻き、カットなどの見習い修業をしながら通信課程で学び、2年後に美容師免許を取得した。

 オーナー夫妻と先輩らの指導を受け、ますます美容の世界への興味が深まり、その奥深さに魅せられた。7年後、世界中の美容師らがスキルアップを目指す英国ロンドンの美容スクール「サスーンアカデミー」に単身留学した。翌年、同スクールのベストヘアドレッサー賞に選ばれ、美容師が自分の天職だと確信した。

 帰国後、国内のカットコンテストでも入賞を重ね、それに伴ってタレントのヘアメークや業界雑誌に髪型を提案する仕事が増え、県内外のヘアショーやセミナーの講師としても招かれるようになった。自分の可能性を追求しようと31歳で独立を決意した。オーナー夫妻は「自分の思い通りの店を作りなさい」と背中を押してくれた。

 美容師になることに大反対だった両親が、開業資金の融資担保に家の権利証を差し出してくれた。そんな両親の信頼に応えようと無我夢中で働き、4年後に借金を完済、その翌年には手狭になった栄町店から桜橋店へと拡張移転した。今夏2号店を開設し、スタッフ9人と共に、お客さまの気持ちになって心配りができる接客に務めている。

 妻結悠子さんと愛猫のサクラ、チャー、ミィのにぎやかな家族。甘えたり、じゃれ合ったりする3匹が夫婦の会話を盛り上げてくれる。「創業時から支えてくれた妻との年1回の海外旅行が、何よりのリフレッシュタイムです」と語る。

 スタッフの技術向上と独創的な感性を養うため、著名な講師を招いて定期的に講習会を開いている。ヘアケアマイスターと呼ばれる髪のスペシャリストも育ち、お客さまに「髪質が良くなった」「手入れが楽になった」などと感謝され、美容師としての喜びをスタッフと分かち合っている。

 「お客さまが生き生きと輝く姿は、美容師の心の充足感につながる。美と健康、癒やしの場として、居心地の良い空間づくりを追求したい」と意欲を語った。

略歴: 昭和42年生まれ。昭和60年県立久居農林高校卒業。同年ヘアサロン「NOA」入社。同62年美容師免許取得。平成5―6年英・ロンドン「サスーンアカデミー」に留学。同11年「HIVE」創業、代表に就任。同30年姉妹店「Koti by HIVE」開店。