料理覚え、小1でみそ汁 母に褒められ、面白さ知る グレイビーバーガーオーナー 稲垣陽介さん

「大きな夢はあるけれど、まだ秘密」と話す稲垣オーナー=鈴鹿市西条5丁目のグレイビーバーガーで

 鈴鹿市西条5丁目のグレイビーバーガーは、グルメバーガー専門店として平成25年3月にオープンした。地元の食材を生かしたこだわりのオリジナルメニューは、20代から30代の女性を中心に人気があり、常連客も多い。

 小学6年生の時、父親の実家がある津市に引っ越してきた。「どちらかといえばおとなしいタイプ。小さい頃は、よく台所で母親が料理をするのを見ていた」と話す。

 母親の横で自然と料理を覚え、小学1年生の時、ネギと豆腐のみそ汁を自分で作った。母親から褒められ、「勉強もスポーツも得意ではなく、褒められることがなかったから、料理って面白いと思った」。

 「レシピを見ながら、どうすれば上手にできるか、自分で考えながら作るのが楽しかった」と料理への熱は冷めず、中学生の時に調理師になることを決めた。

 「当時はパティシエに憧れ、クッキーとかお菓子類をよく作っていた」と話し、「ホットカーペットやこたつの中で生地を発酵させて、クロワッサンも作った」と、懐かしそうに振り返る。

 高校卒業後は大阪の調理専門学校へ進学。基礎をしっかりと身に付け、調理師免許を取得した。「和洋中、総合的に勉強できたことが良かった」

 卒業後は大阪の高級フレンチ店で1年ほど働き、系列店の東京出店に合わせて、東京へ異動。人気店での仕事はきつく、忙しい時には早朝から深夜まで、休憩や食事の時間もないこともあった。

 「付け合わせの野菜を扱うことが多く、過酷な労働の中で得たことは『野菜としゃべれるようになったこと』」と笑う。数をこなしたせいで「手で触れた時に元気かどうか分かる。野菜から伝わってくる」。今でも食材は一つ一つ自分の手で、確かめながら選ぶ。「買い出しに何軒もスーパーを回って、野菜を手に取って選んでいる」

 いずれ独立を考える中、偶然食べたグルメバーガーのおいしさに衝撃を受けた。「ファストフードのハンバーガーとは全然違う。いろんな料理を食べてきた中で、自分の知らない文化だった」

 その後、100店舗以上ある東京のグルメバーガー店を網羅し、1番おいしいと思った店で1年間アルバイトし、26歳で実家に戻った。「三重にこの味を持ち帰りたい」

 開業には不安もあったが、オープン初日の来店客の反応から「やれる」。不安は確信に変わった。

 特に宣伝はしなかったが、フェイスブックで口コミが広がり、多い日には待ち時間が出るようになった。中には奈良や京都、東京など、遠方から足を運ぶ人もいるという。

 昨年は鈴鹿商工会議所と産学官のコラボで「鈴鹿バーガー」も完成させた。

 「子どもに安心して食べさせられる」という声はうれしい。客の反応が目の前で見れるのも楽しい。

 「少しずつステップアップしてきた。鈴鹿バーガーも一つの通過点」と話し、「大きな夢はあるけれど、まだ秘密」と目を輝かせた。

略歴:名古屋市出身。昭和61年生まれ。平成25年グレイビーバーガー開業。