天然塩の良さ伝えたい 47カ国250種取りそろえ 株式会社「そると」社長、 塩ソムリエのお店「四日市Salt」オーナー 藤井智美さん

「『四日市にこんな素敵な店がある』と言ってもらえるような店にしたい」と話す藤井さん=四日市市諏訪栄町で

 四日市市諏訪栄町の塩ソムリエのお店「四日市Salt(ソルト)」は、国内外の天然塩を取りそろえ、地産食材に調和させた創作料理を提供する店として平成26年にオープン。翌27年には、中部地区初となる塩専門の卸会社「そると」を設立し、贈答品としての塩の拡売を図っている。

 四日市市楠町で町工場を営む両親の下、2人きょうだいの長女として生まれた。忙しく働く父母と遊びに出掛けた記憶はなく、中学生になってからは、彩りよく詰められた友だちのお弁当に憧れた。食事も弟と2人だけで食べることが多く、子ども心に「自分の子どもとはもっと一緒に時間を過ごし、手を掛けたおいしい食事を作ってあげたい」と思うようになっていた。

 楠小、楠中を経て、家政科があった暁高校に入学した。バランスの良い食生活が健康と心の豊かさにつながることを知り、調理の基礎を学んだ。3年生の時、「生涯を共にしたい」と思う人に出会った。卒業を待って結婚し、夫と一緒に家業を手伝うようになった。

 結婚後、3人の子どもに恵まれた。長女が生まれつき病弱だったことをきっかけに、体質改善に関する本を読みあさり、食育の大切さを再確認した。食事もおやつもすべて手作りにこだわり、食事とともにアズキの煮汁や蜂蜜漬けのダイコン汁など、飲みやすく工夫して与えた。長女は少しずつ体力がつき、小学高学年になるころには病院通いもなくなった。

 子育てが一段落した5年前、腎臓病を患い入院生活を体験した。減塩食のまずさと、薬の副作用による顔のむくみなどで鏡も見られないつらさから何とか逃れたいと思った。インターネットで腎臓病や塩について検索を重ね、塩ソムリエ協会のサイトを見つけた。まずはセミナーを受講してみようと、大阪まで出掛けた。

 セミナーでは、ミネラルたっぷりの天然塩には解毒作用があり、体温を上げて抵抗力を強めることなど、命の源である塩について多くを学んだ。それまで使っていた食塩やしょう油を、天然塩に切り替えた食事を続け、現在は薬も服用せず、普通の生活ができるようになった。

 塩ソムリエに加え、野菜ソムリエの資格も取得した。体の健康と癒やし効果もある天然塩の良さを広く伝えたいと、塩ソムリエのお店「四日市Salt」をオープンした。県産の焼塩「岩戸塩」や沖縄の海塩「ぬちまーす」から、パキスタンのブラック岩塩など47カ国約250種の天然塩を取りそろえ、それぞれの特徴を生かした創作家庭料理を提供している。

 メニューは、自家製のローストビーフや網焼き鶏のたたき、ポテトサラダなど定番の10種と、鶏塩鍋など日替わりのお勧め料理もある。また、地酒とグラスの縁のブレンド塩との組み合わせが絶妙なソルティードッグは酒通に大人気だという。口コミでお客が増え、「ただいま」と来店する常連客や女子会で訪れるグループも多くなり、料理とオーナーの塩談義を楽しんでいる。

 午後5時から午前0時までの仕事で、フレンチブルドッグの愛犬ポコと過ごす時間が少ないのが悩みだが、休日にはポコと公園で思いっきり遊んでリフレッシュしている。

 「塩は食を見直す入口。少しでも体に良いものを伝えていくことが自分の使命だと感じています。『四日市にこんな素敵な店がある』と言ってもらえるような店にしたい」と目を輝かせた。

略歴:昭和43年生まれ。同62年私立暁高校家政科卒業。平成26年四日市Salt開店。同27年株式会社そると設立、社長就任。同28年四日市西倫理法人会入会。同年同法人会女性委員長就任。