地域により良い医療を 求人情報も、全国展開へ 医療・介護情報誌「メディサポ」社長 小串拓由さん

「3年後は、全国各地でメディサポが発刊できるよう、社員と頑張っていきたい」と語る小串さん=四日市市沖の島町のメディサポ北勢支社で

 多気郡明和町に本社を置く「メディサポ」は、自宅の一角を事務所にして平成21年に創業。県初となる医療と介護、求人の無料情報誌作りを始め、現在は県北勢・中勢・南勢版合わせて年間28万部の季刊誌を発刊している。今年9月に創刊した「メディサポ静岡」を手始めに、全国展開を目指している。

 大阪府堺市で2人兄弟の長男として生まれ育ち、小4から高校卒業まで9年間、サッカーに打ち込んだ。進学した桃山学院大学の社会学部で学び、卒業後は家具・インテリア製造小売会社「ニトリ」に入社した。

 アメリカでの新入社員研修後、埼玉、兵庫、三重と毎年転勤を繰り返した。伊勢市で知り合った由規さん(30)との結婚を機に、転勤が多かった「ニトリ」を退社して三重県に落ち着き、松阪市の広告看板会社に転職した。

 平成19年の医療法広告規制改正によって、専門分野や写真掲載など医療機関のさまざまな情報発信ができるようになった。転勤先の慣れない地で病院探しに困った経験から、地域の住民が緊急時でも適切な病院を選択できる方法と、病院の詳細を事前に知る手段を模索し、医療機関と患者双方のニーズに応えられる媒体作りを考案、28歳で起業を決意した。

 自宅を拠点に、病院や介護施設を回って営業をかけ、掲載依頼を受けた所で取材をし、記事を仕上げる。印刷業者から完成した冊子を受け取り、公的機関や病院、薬局、商業施設などへの設置まで、1人で全てこなした。初の広告主になってくれた松阪市の中川医院長の「僕も開院したばかり。お互いに頑張ろう」という一言が大きな励みになった。

 2年後には片腕となってくれる男性社員を迎え、営業活動に力を注げるようになり、一気に売り上げを伸ばした。現在は社員16人と共に、売り手と買い手がともに満足し、社会貢献もできるのがよい商いであるという近江商人の心得「三方良し」を社訓として、より良い紙面作りを目指している。

 最新の北勢エリア版では、11月8日の「良い歯の日」にちなんで歯科医院を特集した。訪問診療や歯周病治療、矯正治療などに力を入れている医師らのメッセージを、親しみを持てるように顔写真とともに紹介。個々の介護施設の特色や費用、福祉用具の販売・貸与、医療・介護業界の求人情報などを満載して、地域住民がより良い医療・介護サービスを受けられるように工夫している。

 年4回の発刊に合わせて、それぞれが自分のペースで働けるように、同僚に負担を掛けない範囲でスケジュールを組めるフリーシフト制を導入し、子育て中の社員らに配慮している。

 たまの休日は5歳と2歳になる息子たちと公園で遊んだり、買い物を楽しんだりしている。「育児と会社の経理を兼務し支えてくれる妻に、心からの感謝を伝えたい」と照れながら話す。

 「メディサポ」の全国展開に向け、今年9月、多気町の「バンキョーホールディングス(万協製薬)」グループの一員となり相互協力体制を整えた。「『一歩踏み込んだ医療と介護、生活情報をご家庭に』を合言葉に、3年後は全国各地でメディサポが発刊できるよう社員と頑張っていきたい」と熱く語った。

略歴:昭和56年大阪府で生まれる。平成15年桃山学院大学社会学部卒業。同年「ニトリホールディングス」入社。同18年「日本道路案内標識」入社。同21年「メディサポ」創業、社長就任。