与えられた環境で努力 働きながら大学で技術学ぶ 小林機械製作所社長 森十九男さん

「与えられた環境の中で精一杯努力することが大切」と話す森社長=四日市市八王子町の小林機械製作所で

 四日市市八王子町の小林機械製作所は昭和11年創業。専用工作機械や自動車部品の金型、省力・省人装置の設計・製作を中心に展開している。
 
 「おとなしく目立たない子ども時代だったが、昔から機械いじりが好きだった」と話す。実家が農業を営み、農機具が身近にあり、「機械好きの要因の一つになったのかもしれない」。小学校高学年の頃には油漏れを直そうと発動機を自分で分解し、組み立てた。

 工業高校3年の3学期に病気で長期入院し、入社予定の会社から就職を取り消された。小林機械製作所へ夏休みのアルバイト先だった縁で7月から入社した。

 設計部門で働き始め、技術的側面の未熟さを痛感した。翌年、「このままではい 退職を決めたが、進学費用を捻出できず困っていた時、社長が助けてくれた。会社の制度で勤めながら大学の機械工学科で学んだ。

 「人生どうなるか分からない」と述べ、「一つだけはっきりしていることは、その時与えられた環境の中で、精いっぱい努力することが大切。天は必ず見ていてくれる」「それなりの努力を続けていると、あるとき芽が出て花が咲き、実になり、いい循環につながる」と振り返る。

 社長に就任するまでは、技術者としてまい進してきた。「自分の思いを具体的な形や動きにできることが面白い。機械は努力すればするほど、いい結果が表れる」と語る。

 いつも支えてくれる、尊敬する創業者、小林仙次郎氏に対しては、「技術的にはライバル。技術的なことでは議論もよくした」と懐かしむ。

 社長就任後は、毎月の決算を全社員に報告し、会社の現状を共有してきた。「これからの中小企業が生き延びる条件は、人材育成と自社製品の研究開発、連携」と言い切る。

 「人生の先輩として、後輩たちに自分が身に付けて技術を伝えていく義務がある。人間、働けるうちは働かなければ。まだまだやることはたくさんある。ゆっくりしているひまはない」と元気な笑顔を見せた。

略歴:昭和19年生まれ。四日市市出身。同37年小林機械製作所入社、同57年取締役技術部部長、同63常務取締役技術開発担当を経て、平成6年社長就任。同8年労働大臣表彰、同20年県産業功労者表彰。県職業能力開発協会会長、四日市機械器具工業協同組合副理事長。