「運ぶ」から「お届けする」へ 高いクオリティーの業務目指す アイサン物流社長 服部功さん

「22年間、無我夢中でやってきた」と話す服部さん=菰野町諏訪で

 菰野町諏訪に本社を置くアイサン物流は、平成5年に創業。一般貨物・重量物などの運送・搬入・据え付けから、工場・事務所の引っ越し業務などを、東海地区を中心に中部、関西、関東エリアで展開している。アイサン物流グループとして、旅行業、人材派遣、倉庫管理にも業務の幅を広げている。

 2人兄弟の長男として菰野町で生まれた。中・高時代はバレーボールに打ち込み、中2の時は県大会まで進んだ。高校では、各地から優秀な生徒が集まっておりレギュラーにもなれなかった。「上には上がいる」と実感した。「思い返せば、あれが人生初の挫折だったなぁ」と話す。

 就職したガソリンやプロパンなどの販売をする会社で、給油に来る大型トラック運転手のきびきびした働きぶりに憧れ、大手運送会社に転職した。運行、営業、事務など全てが面白く、水を得た魚のように力いっぱい働き、厳しいノルマもこなした。その実績と人柄を買われ、他社に管理職として迎えられた。

 「やるからには自分で」と、32歳で独立を決意した。トラックを買う資金もなく、妻みつ子さんとゼロからのスタートだった。自宅に事務所を置き、運送取り扱い事業所の許可を取って、飛び込み営業で得た仕事を同業者に頼んで運んでもらうことから始めた。「今思うと、怖いもの知らずだった」と創業時を懐かしむ。

 徐々に仕事が増え、お客からの要望が多くなってきたことから「自社の車を持ってやりたい」と、強く思うようになった。資金を借り入れ、平成11年に念願の自社トラック5台を購入。それまでの白ナンバー車と合わせて7台を稼働するようになり、信頼する社員と共に自らも運転しながらエリアを拡大してきた。

 また、経営の効率化を図るアウトソーシング(業務の外部委託)に着目し、同10年に人材派遣会社「アイサン人材保険」を、同15年には一時保管・保管備蓄倉庫としての利用や配送業務などのニーズに応える倉庫管理会社「諏訪梱包(こんぽう)運輸倉庫」を設立した。

 「物」に込められたお客さまの心を大切に、迅速、確実、安全に、より高い物流のクオリティーを目指す―。創業以来の経営方針を胸に、預かった製品を「運ぶ」から「お届けする」という社員一人一人の姿勢が、顧客満足度の向上につながってきたと感じる。

 現在はグループ全体で社員45人、車両は19台に増えた。普段顔を合わせることが少ない社員も、年一度の1泊2日のバス旅行には、全員が参加してアイサンファミリーの絆を深め合っている。

 みつ子さんは総務と経理をこなして夫を支え、子ども2人を育ててきた。長女は嫁ぎ、長男浩二さん(30)は大学卒業後、他社で5年ほど経験を積んで入社し、父の跡を継ぐべく頑張っている。

 「『趣味は仕事』と即答できるほど無我夢中でやってきた。息子にうまく引き継ぎたい」と笑顔で語った。

略歴:昭和33年生まれ。平成18年菰野町商工会副会長に就任。同25年四日市法人会菰野ブロック長に就任。