「男だったら上目指せ」 父の後継ぎ服の世界で勝負 東海衣料社長 近藤大輔さん

「商業を通じて地域の活性化を」と話す近藤さん=四日市市西浦の東海衣料で

 四日市市西浦、学生服の製造・卸業「東海衣料」は、昭和36年に伯父の故堀啓佐久さんが同市堀木で創業。平成25年、父邦康さん(71)の跡を継いで4代目社長に就いた。現在は、北中勢地区を中心に学生服、体操服、事務服、作業着、紳士服などに商材を広げ、企画、製造、卸販売を展開している。

 2人兄弟の長男として四日市で生まれた。「小学生の時は、快活な弟と正反対で、言いたいことも言えない気の弱い性格だった」。そんな自分を変えようと、常磐中ではバスケットに打ち込んだ。「3年生最後の県大会決勝で西笹川中に敗れて、東海大会に進めなかったのが悔しかった」と当時を振り返る。

 「これからはIT(情報技術)時代」と、海星高校ではコンピュータークラブに入部して、仲間と一緒に情報処理検定に挑戦した。進学した愛知学院大でも情報処理研究会に籍を置いた。卒業する先輩からバトンを引き継ぎ、部員約100人のまとめ役を務めた。「気が付けば、自分の意見をはっきりと言えるようになっていた」と話す。

 「男だったら、どんな分野ででも上を目指せ」。大学ゼミで講演したホテルマンから企業社長になった人の言葉に感銘を受けた。就職面接では「頑張れば社長になれますか」と質問し、考え込んだ面接官が「部長までですね」と答えたという楽しいエピソードを持つ。

 「尊敬する父の跡を継ぎたい、服の世界で勝負したい」という思いから、名古屋市の企業制服販売会社に就職。毎日、地図を片手に市内の会社を回る飛び込み営業で厳しさを学び、2年後、東海衣料に入社した。

 先代に勧められた経営者のための勉強会で「会社は社員のもの。社員が気持ちよく仕事ができる場所にするのが社長の役目」「社員の生の声を聞き、しっかりとコミュニケーションをとること」の大切さを学んだ。

 平成25年の社長就任を前に、お互いを知り合うことで会社の向上につなげようと、社員と手紙のやりとりを始めた。「どんな会社であるべきか」「人生の価値観」など、一人一人と素直な意見を交わし合った。「従業員とその家族を幸せにするために、自社の繁栄を追求する」「顧客、仕入れ先への感謝を忘れず」など、それらの書簡を経営理念の3本柱としてまとめた。

 趣味は料理。月に数回は得意の豚角煮やパスタを作ってリフレッシュを兼ねた家族サービスをする。現在、中3の一人息子が小学生のときは、立候補でPTA本部役員を務めるなど、子育てにも協力的な良き父親の一面も併せ持っている。

 「学生服は、仲間意識や愛校心、家族愛にもつながる」。社長就任から2年、幼稚園から小・中・高校まで、それぞれのニーズと着用者の立場に立った提案で取り扱い校を増やしてきた。「商業を通じて地域の活性化を図り、四日市を住みたい町にしていきたい」と笑顔で語った。

略歴:昭和44年生まれ。平成4年愛知学院大学商学部経営学科卒。同25年四日市商工会議所企画委員会副委員長に就任。同26年県中小企業家同友会北勢支部副支部長就任。