「どてらい男」見て育つ 修行時代に縁、仕事哲学学ぶ アイテムフーズ社長 寺本誠さん

「商品とともに感謝の気持ちを届けていきたい」と話す寺本さん=三重郡川越町のアイテムフーズで

 三重郡川越町のアイテムフーズは北勢で唯一、高級割烹珍味を中心とした業務用食材の卸・販売会社として平成元年に創業した。販路はホテル、結婚式場、旅館、割烹から、病院、高齢者施設まで拡大している。

 季節の前菜、酢の物、焼き物、煮物、揚げ物からデザートまでの完成品と素材約2万種を取り扱う。また、地産地消をテーマに、水沢茶を使ったアイスクリームなど、特産品を使ったオリジナル食品を企画、新ブランド「MIE・創食」として県外にも発信を目指している。

 川越町で2人兄弟の長男として生まれた。3歳の時、四日市市富洲原に引っ越し、富洲原小から私立暁中、四日市西高に進んだ。中高6年間打ち込んだサッカーを通し、仲間が心を一つにして強い相手に挑戦する意欲など、多くを学んだ。

 名古屋市の愛知学院大に進学し、商学部経営学科を選んだ。幼いころ、家族で欠かさず見ていたテレビドラマ「どてらい男(やつ)」の影響で、「裸一貫で成り上がっていく主人公の破天荒な姿に、自分の将来を重ねていました」と懐かしそうに話す。

 大学の友人の実家が営んでいた食品卸・販売業に興味を持ち、「この業界で起業するぞ」と、志を立てた。卒業後、滋賀県大津市の食品会社に就職して5年間、住み込みで修業に励んだ。27歳で実家に戻り、倉庫を改装して冷蔵庫や冷凍ストッカーを設置、事務員と2人だけで開業した。

 修業時代、世話になった岐阜県の卸問屋代表が、独立の後押しをしてくれた。「本来、新規の業者とは取引しないが、うちを倉庫だと思って毎朝通いなさい」の言葉に甘え、早朝から岐阜を往復して売れそうな食材を仕入れ、飛び込み営業に駆け回る日々が始まった。1年後には注文が増え、2年ほどで商売を軌道に乗せることができた。 「売り手の都合で商いをせず、買い手が満足し、さらに商いを通じて地域社会に貢献する」という近江商人の哲学「三方良し」をはじめ、「絶えず目的意識を持て」など、仕事の厳しさと喜びを教えてくれた人生の師と仰いできた卸問屋代表は4年前に他界した。

 4人の従業員とは、業務に関しては横並び。同じスタンスで自由に意見を交わし合い、「報告」「連絡」「相談」の「報連相(ほうれんそう)」の実践を徹底し、食事会などでアイテムフーズ・ファミリーの親睦を深めている。

 最近の趣味はワインの収集。父和明さん(85)と、グラスを傾けながら語らう時間を楽しんでいる。名古屋の大学で学ぶ2人の息子たちには「広い世界を見た上で、自由な道に進んでもらいたい」と考えている。「目配り、気配り、心配りをモットーに、商品とともに感謝の気持ちを届けていきたい」と、目を輝かせた。

略歴:昭和37年生まれ。同60年愛知学院大商学部経営学科卒業。平成12年アイテムフーズ法人化。