―4つの理想掲げ運営―高齢者向け住宅・介護サービス「ノースアップ」社長 井上信正さん

【「地域に開かれ、地域に根ざし、地域になくてはならない施設を増やしていきたい」と話す井上さん=四日市市日永で】

高齢者福祉施設で17年間共に介護に携わってきた友人と独立し、平成28年に四日市市日永で「ノースアップ」を創業した。翌29年に住宅型有料老人ホーム「ケアヒルズ桑名」、令和元年にサービス付き高齢者向け住宅「ケアヒルズ四日市」、今年4月に開設した「ケアヒルズよごう」の3施設を、介護従事経験者ならではのきめ細かい心遣いで運営している。

「利用者のくつろぎと安心」「人が育つ環境づくり」「地域とかかわりが続く」「安定した運営」の4つの理想「4理想(よりそう)」を掲げ、3施設の看護士、理学療法士、作業療法士など約70人のスタッフ全員が、自身の祖父母を見守るように利用者のお世話をしている。

ケアヒルズ四日市は、見晴らしの良い小高い丘の上にあり、居宅介護支援、訪問介護、通所介護(デイサービス)など、利用者さんそれぞれの状態に合った支援を提供している。サービス付き高齢者向け住宅41室を備えており、入居する方々は使い慣れた家具やテレビを置き、緊急時の通報装置を完備した部屋や共有スペースで自由に過ごすことができる。毎日、体調確認のため体温や血圧などの測定や、夜間を含めて1日5回の安全確認時は、スタッフと家族のようにおしゃべりを楽しんでいる。

コロナ禍でクラスターが発生したことがある。防ぎきれなかったことを入居者さんとそのご家族にわび、お叱りを覚悟していたが、「大変だと思うが頑張って」「応援しています」と励ましの便りが届いた。感謝ととともに、より一層気持ちを引き締めようとスタッフと誓い合った。

リモート面会だけでは寂しいだろうと、施設内での普段の様子をホームページで紹介している。お花見やカフェに出かけた時の入居者さんらの笑顔とコメントを掲載した月刊ケアヒルズ新聞は、ご家族にも好評を得ている。

四日市で3人きょうだいの長男として生まれた。幼少時はおばあちゃんっ子で、いつも祖母のそばでプラモデルやブロック遊びをしていた。小学時代、大好きな祖母が寝たきりになった。介護する母の姿を見て、何か自分にもできることを見つけてはお世話を手伝った。「のぶ君、ありがとね」と言う祖母の笑顔が今も忘れられない。

小4からスポーツ少年団で野球を始め、中学では軟式テニス、高校ではバドミントン部に入り、3年生で県大会に進んだ。共に汗した仲間との絆は、貴重な青春の1ページとなっている。卒業後は、鈴鹿オフィスワーク医療福祉専門学校に進み、介護福祉科で2年間学んだ。

四日市市の特別養護老人ホーム2施設で、介護職員として、相手の気持ちを察しながら寄り添う仕事に心からやりがいを感じながら17年間勤務した。当時、異業種から介護業界への参入が急激に増えたこともあり、介護従事者ならではの経験を生かした施設をと、一緒に働いてきた友人と話し合い、独立・創業を決めた。

毎朝、スタッフ全員と入居者さん、利用者さんたちと交わす元気なあいさつで1日が始まる。着替えや朝食の介助、健康チェック、作業療法士による機能訓練、工作や塗り絵、カラオケなどの趣味活動を見守っている。また、天気の良い日は入居者さんと一緒に近くの公園に出かけて草抜きをしている。園内で遊ぶ子どもやその母親らとの触れ合いを楽しみながらの奉仕作業が、地域との関わりを一層深めている。

仕事柄、なかなか休みは取れないが、たまの休日は日帰りの温泉旅行に出かける。和歌山県の那智勝浦や愛知県の知多などの温泉で、景色を楽しみながらゆったりと半身浴をするのが一番のリフレッシュタイムだという。

焼き芋パーティーや花火大会、本格コーヒーや和服でのお抹茶サービスなど、皆さんに喜ばれるイベントのアイデアは全てスタッフの提案を採用したもの。「今後も、スタッフと共にできることの幅を広げたい。地域に開かれ、地域に根ざし、地域になくてはならない施設を増やしていきたい」と目を輝かせた。(岸)

略歴:昭和54年生まれ。平成11年鈴鹿オフィスワーク医療福祉専門学校卒業。同年特別養護老人ホーム入社。同28年「ノースアップ」創業。同29年「ケアヒルズ桑名」創設。令和元年「ケアヒルズ四日市」創設。同5年「ケアヒルズよごう」創設。

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