投資家悪食論

投資と投機の違い

 ウオール街の有名な実話にこういうものがあります。
破綻した銀行頭取が、上院委員会にて政府当局者に詰問されました。

 「貴方は株式投機行為をしていたでしょう。」
「投機活動など私はしておりません。」
「いや、投機活動をしていたという確かな証人もいますぞ。」
「私は投機活動など一切いたしていません。株式投資をしていただけです。」
「それじゃ聞きますが、投機と投資の違いは何ですか。」
「失敗した投資活動は投機と呼ばれます。」(一同爆笑)

 憤然とした質問者は聞きます。

 「それじゃあ、成功した投資はなんと呼ばれるのですか。」
「成功した投資は賢い投資と呼ばれます。」(一同爆笑)

 この頭取は無罪放免されたそうです。

 弊社の業務の一環である出版活動と投資活動はよく似た部分があります。同じく経済活動でありますから似てくるのも当然ですが。出版業界の今を語ることが、日本経済の今を語ることになり、会員の皆様の投資活動に大きく資となると信じて、長くなりますが連載させていただきます。

 今、日本の出版業界は未曾有の危機にあります。遅れてきたバブル崩壊といわれています。では出版会の何がバブルだったのか。それは返本率を見れば歴然とします。

書籍  40%
雑誌  30%

 これが出版業界最大の問題なのです。出版社から出荷された書籍の4割が、購入者が無くて、6ヵ月後に返本されてくるのです。1970年代初期には

書籍  30%
雑誌  20%

 という数字でありました。このあたりが適正な在庫の数字であったようです。
在庫が馬鹿みたいに増えてきたのがバブルだったと考えられます。

 日本の出版業の重大特質が「構造的慢性的自転車操業」であることはご承知の通りです。何故自転車操業状態に陥るか。原因のひとつは取り次ぎ金融に頼るからです。取次ぎ金融に頼らざるを得ないのは、過去に発行した書籍が売れなかったからなのですが。このあたりの悪循環が生き物である経済活動の一断面でもあります。この取次ぎ金融の効果が、出版社の赤字問題の先送りをして、ここまで業界を破滅的に苦しめることになったわけです。

取次ぎ金融とはなにか。

 大手取次店(東販,日販など)は取引条件として、新刊委託は翌月30%の手形支払いをしてくれます。(取次ぎと出版社の契約条件によって数字の違いはあります。)30%だけの支払いとはいえ、取次ぎに納入しさえすれば、売れても売れなくても翌月入金されるのです。従って、売れない本を出せば出すほど、資金繰りのためにますます、何でも良いから出版点数を増やせということ陥りがちです。月4点平均出版していた出版社が、6点の出版になり、10点の発行になり、15点を印刷するようになり、20点の出版になるという次第です。

 いきおい、数を出すことが出版社という共同体的組織の存続のための目的となり、売れる売れないは二の次になってしまうのです。5000部ずつ毎月20点発行して6ヵ月後の返本をチエックしたら、100部平均しか売れていなかったという戦慄すべき数字の報告もあります。供給過剰、貴下の、創造性の貧困、担当者の無能、無責任という日本経済の閉塞状態の縮図がここにあるのではないでしょうか。(次回は出版の投機的なところについて話を進めさせてください。)