中国での反日デモ  ― 指桑罵槐 政治闘争か (05.4)

 中国での反日デモが激しい。この事態は本当に反日のためだけの行動なのでしょうか。
中国の内政および政治闘争が劇的な状況になりつつあるのでしょうか。
中国には政治活動の自由などありません。新聞やマスコミもない国なのです。
あるのは中国共産党の機関紙だけです。反日デモは市や国の行政当局者の同意ないし黙認がなければ行えません。
日本を攻撃することによって得するのは、政権派か非政権派か、どちらでしょう。

 中国人の行動原理を表すものに、「指桑罵槐(しそうばかい)」=桑(くわ)を指さして槐(えんじゅ)を罵(ののし)る=ということわざがあります。出典は「この厄介な国、中国」(東京外国語大学名誉教授・岡田英弘氏、ワック文庫)。以下、この本に依拠して書かせていただきます。クワは畑に植えられる木で、葉は蚕(かいこ)のエサになりますが、エンジュは街路樹や庭木として植えられ、家具を作る際の材料となる喬木(きょうぼく)であって、似ても似つかない。

 「桑の木を指して槐を罵る」というのは、「本当の怒りの対象とは全然別のものを攻撃する」という意味だそうです。「鶏を指して犬を罵る」と言っても意味は同じだそうです。
岡田氏はこう記述されています。中国人が怒っているとき、その言葉をうのみにしてはいけない。中国人は、どんなときも表立って誰かを批判したり、攻撃することは決してない。

 つまり中国人はある相手を攻撃しているように見せて、実は別のところにいる人を批判しているのです。文化大革命の例(毛沢東対劉少奇)、民主化運動の例(鄧小平対趙紫陽)、歴史教科書の例(参謀総長楊尚昆率いる人民解放軍対鄧小平)。どちらかが一方を打倒し尽くすまで、闘争は続くのでしょうか。差し当たっては五月四日の「五・四運動」記念日が次の危険日かもしれません。

 ▼狙われているのは誰か

 個人的な意見を申し上げれば、「教科書問題、靖国問題、常任理事国入りを俎上(そじょう)にあげているのを見ると、政府内不満分子・人民解放軍が政権側を攻撃しているのではないか」と。
あるいは、資本主義的共産主義国中国の矛盾が覆い隠せないぐらい露呈してきたと指摘する識者もおみえです。

 共産主義国でありながら、これほどの貧富の差・地域格差があり、しかも今も格差は進行中であるという矛盾。マスコミのない中国内部のことは分かりにくいですが、地方政府の税金と称する収奪に、農民や労働者の暴動も頻発していると伝えている筋もあります。
社会主義的資本主義国ニッポンに指導していただいた方がよいのかもしれません。

 ▼反日暴動をあおり得する国は

 日本と韓国・中国の外交が疎遠になって、国益としての大きな得点が上がる国はどこでしょう。
それらの国々は反日暴動をひそかに承認し(表面上は非難しても)、ほくそ笑んでいないでしょうか。
東アジア共同体をつくられると、国家戦略上大転換を強いられる超大国もありますね。第二次大戦の際にも、世界百二十国が参戦したといわれる中で、まったくわれ関せずで漁夫の利を占め、国家を安泰にしたヨーロッパの超大国がありましたね。

 目を離せませんね。いずれにせよ、「アジアの平和への幻想」は打ち砕かれました。
すべて中国に責任があります。