「脳を鍛える」

 現下の日本を見てみますと、「政権交代して景気を良くしてほしい」(昨年衆議院選挙前にインターンシップに来ていた女子大学生Aさんの言葉)という庶民の願望とは裏腹に、政府はデフレ宣言をするものの、何ら具体的な即効性のある対策は打ち出せていません。

 何度も繰り返し繰り返し、申し上げているように、政治には景気を良くする力などありません。

 Aさんは不思議そうに、「予算をつけるとかして?」と、のたもうていました。「政治に景気を良くする力があるのなら、1990年以降とっくに景気は良くなっていたはずです。」  一部の業界には公共工事等で潤うこともあるでしょうが、大きくなりすぎた日本経済にとっては焼け石に水です。畑にじょうろで水をまくが如き行為です。撒くはしから蒸発していきます。

 しかも、変動相場制になり、貿易自由化、金融自由化が進んでいる現在では、余剰資金はリターンを求めて世界に流失します。

 企業や個人が新製品、新産業に挑戦しなくなっていることが、日本の20年にわたる景気低迷の大きな原因の一つであります。

 企業の大きな使命は、新商品を出し続けることです。新聞、マスコミもそれを怠ってきました。

 政府に成長戦略を求めるのではなく、学生や個人、企業が新技術の開発、新製品を開発・販売する新しい会社を立ち上げ、成長戦略を企業独自に実行していかねばなりません。

 それには、孤独に勉強し、こつこつ創意工夫するしかありません。

 このたび、共同通信社に加盟することを表明した、毎日新聞社の朝比奈社長は「記者会見をそつなくまとめればいいと思っている記者は要らない」と、表明されました。

 私の言いたいことはこれに尽きています。取材の過程で疑問に思ったこと、不自由を感じたこと、県民からの不平不満の声を、フイード・バックすれば、発明・発見、新たな視点からの取材、記事などいくらでも湧いてくるはずです。

 10年前に出版された本と、30年前に出された本とから抜粋して参考に供します。

 「人を動かし、組織を動かし、社会を動かそうと思うなら、いい文章が書けなければならない。

 いい文章とは、名文ということではない。うまい文章でなくてもよいが、達意の文章でなければならない。文章を書くということは、何かを伝えたいということである。」

 「自分が伝えたいことが、その文章を読む人に伝わらなければ何にもならない」

 「何かを伝える文章は、まずロジカルでなければならない。しかし、ロジックには内容(コンテンツ)がともなわなければならない。論より証拠なのである。論をたてるほうは、頭の中の作業ですむが、コンテンツのほうは、どこからか材料を調べて持ってこなければならない。いいコンテンツに必要なのは材料となるファクトであり、情報である。」

 「そこでどうしても、調べるという作業が必要になってくる。」

 (中略)

 「いまの日本の教育体系では、もっぱら知識の注入だけが行われており、いかなる形であれ、知的アウトプットの訓練がなおざりにされている。しかし、私に言わせれば、学習というのは、知的アウトプットができるところまでいって、はじめて完了する。」

 「学習というのは、知的インプットのことだとばかり思っている人は誤りである。頭に知識を山のように詰め込んだつもりになっても、その知識をアウトプットする知的文章も書けなければ、知的発言もできない人はただのバカと同じである。

 主観的には大インテリになったつもりでも、客観的には、知的アウトプットがゼロの人は、頭に知識が何もない人と同じである。」

 「大学入試まではもっぱら知的インプット能力の勝負だが、社会に出たら、知的アウトプット能力の勝負である」

 立花隆「脳を鍛える」新潮社刊
頭でっかちの弊害―中国はなぜ衰退していたか

 「いまや国中、政治を口にしないものはなく、『商子』『管子』といった政治書はどこの家にもあるというのに、国は貧しくなる一方である。それは、農業を論ずるものばかり多くなって、実際に鋤を手にして耕作するものが少ないからである。」

 「国中、軍事を論じないものはなく、『孫子』『呉子』といった兵法書はどこの家にもありながら国の戦力はますます弱まるばかりである。それは実際に武器を取って戦場に立つ者がいないからである。」—-韓非子より。
(以上は大橋武夫氏の著作「成功の法則」よりの引用です。感謝!)

 「いまや日本国中、年金問題で口角泡を飛ばしているが、どうすればたくさんもらえるか、誰の責任でこうなったかの果てしなき論争です」

 「攻められる側の役人は、ここを先途とばかりに、最大の能力である責任回避力を駆使して防戦するから、決着はつかないまま年金財政は悪化するばかりです」

 「農業の所得補償や子育て手当のばらまき政策も功を奏して、民主党は政権を取ったが、経済成長なくして福祉政策は実現不可能であり、その財源を増税に求めようとしています」

 「それは実際にバリバリ金を稼ぐものがいないからである。最も難しいことですから」