「戦争とゲーム理論の戦略思考」竹内靖雄 日本実業出版社

 尊敬する竹内先生が新刊を出されました。
成蹊大学を定年退職された後、体を悪くされていたようで心配していましたが、 一陽来復されたようです。
ご恵贈いただいたので早速手に取りましたが、みるみる引き込まれていきました。

 浩瀚な読書量と明晰な頭脳を用い、いかなる宗教・イデオロギーにも組せず、透明 なる市場主義で森羅万象を、あたかも鋭利な日本刀で両断するがごとく、鮮やかに解 説してくれるのが氏の著作です。

 この最新作、こういう本を出してもらうと困るな、というほどの膨大な内容が凝縮 された本です。
なぜなら、これまで私がこつこつと試行錯誤しながらの読書遍歴で、まとめてきた 知識体系が全て網羅されているからです。しかも要を得た図表、イラストが付けられ ています。

 「本書の狙いは、戦争やビジネスのための戦略的思考へのガイダンス、および頭の トレーニングの材料を提供することにある。」と著者は言います。

 「戦略的思考のすすめ」なのです。

第一章 戦争と戦略
第二章 戦略書に学ぶ
第三章 ゲーム理論の発想
第四章 戦略書における名言

 と、大量の情報が記載されたこの本は、凡百の解説書の十冊以上の内容を含んでい ます。
文章の達人による平易な解説は、竹内成蹊大学名誉教授のこれまで培ってきた経済思想学者・経済倫理学者としての著作・実績の重低音に、信頼感を裏打ちされています。

 この本は「3時間でゲーム理論がわかる本」とか「30分で戦略家になれる!」とい うものではありません。
この本を読めば、相場で儲かる戦略がわかるものでもありません。(そんな必勝法 は無いことは書かれています。)

 これから社会人になる、目線が高きにある若者、長年の読書歴をひとくくりにまと めて生きたい中高年者、理想と現実のはざ間で悩む青年たちにとっては必須の本であ りましょう。

 入門書であり、まとめの本であるのです。

 それにしても、これだけの内容を含んだ著作がたった1700円とは安すぎる。