私は既存メディアの業界人でありますから、これから述べることは自分が属している業界を守るためであろうと、誤解されがちであるのを百も承知であります。
したがって表題部に掲げた新書の言説を引用し、私なりに要約して、参考になるだろう歴史的事実を追記します。
岸博幸さんもこう言っておられると、傍証してもらう次第です。
第二次大戦後の民族独立運動の波は、大英帝国の金城湯池であったインドにも及び、1947年英連邦王国として独立し、1950年に社会主義共和国として独立します。
独立にあたり、英国外交部はインド国の独立の準備研修の一環として、親切にも暗号の講義をします。
数字をキーとした暗号作成・解読、文書をキーとした暗号書作り、等々想像されます。
独立国である限り、本国と現地大使館とのやり取りは暗号を使わねばなりません。
連日の講義に疲れ果てたインド人官僚の前に、英国人教官は一台の暗号機を見せます。
敗戦国ドイツから押収したエニグマです。暗号自動作成機であり自動解読機であります。
「これを使えば、簡単に暗号を作成し、解読できる。これはいまや世界にインドにしか存在しない」てなことを言って、数十台インドに買い取らせたことでしょう。
それから数十年間インド外務省はエニグマを使用して、外交秘密文書のやり取りを在外公館と本国間で、きわめて能率的におこなっていました。
英国情報部もエニグマを使って、すこぶる能率的にインドの秘密外交文書を受信していました。
(以上 小林千三による)
インターネットのただ乗りの被害をこうむるのは、新聞・雑誌・TVだけではありません。音楽産業も大打撃を受けます。
優秀な音楽家が長い時間をかけて作曲した音楽が、タダでファイル交換ソフトによって盗まれてしまっているのが実情です。
「米国のネット上を日々流通する音楽ファイルのうち、合法なものは20曲中1曲しかないと推定されている」のです。
優秀なジャーナリストの養成には、良質な人材と長期にわたる訓練・研修に堪える金銭的裏付けが必要です。音楽家にも同じことが言えます。
グーグルやヤフーは全てを、泥棒市―かっぱらいあいの世界に落とし込みます。
じっくりと製作するよりも、安かろう悪かろう早かろうの世界です。
これらの著作権違反行為に対して、米国の裁判所はなぜか宥和的なのが大いなる謎です。
つまりグーグルのGメールやヤフーのHOTMAILはエニグマみたいなものではないだろうかというのです。
これは便利だ、しかもタダだ、タダだと使っていたら、すべてのメールは盗み読まれていた。
個人の秘密、プライバシー、学校の秘密、企業の秘密まですべて外国のサーバーに蓄積されていた、というのはありうることです。
搾取されるカネと文化という語句をもう一度かみしめてみてください。
かつてはB29で爆撃され焦土とされましたが、今度はネットでやられつつあるのではないでしょうか。
中国が頑なにネット検閲をし、グーグールに目を光らせて攻撃するのも大いに理由がありそうです。
重要な文書は郵送に限ります。