三重県にプロサッカーチームができる意義②

 仮に三重県にJリーグに所属するプロサッカーチームができたら、どのようなメリットが地域や三重県民にもたらされるのかを紹介したい。

 1つ目に、「三重県の優秀な人的資源が教材となり、知識・経験・技術が次世代へ継承される」という点が挙げられる。現在県外で活躍している三重県出身の現役プロ選手や元プロ選手が三重県内のプロクラブにUターン就職すると、三重県出身の選手が活躍する姿を日常的に見ることができる。そして学ぶことができるのだ。

 例えば、現在目覚ましい活躍をしている三重県出身のプロサッカー選手といえば、山口蛍選手(セレッソ大阪所属・名張市出身)や浅野拓磨選手(VfBシュトゥットガルト所属・菰野町出身)だろう。彼ら二人の普段の練習に取り組む姿勢から、次世代を担う子供達が学ぶことは多いはずである。そんな彼らの真剣な姿勢を実際に見たことのある三重県の少年少女は何人いるのだろうか?年に一度、彼らの帰省時に教えてもらっても学びは多いであろうが、試合やチーム内練習での真剣勝負を間近に見て初めて得られるものはさらに多い。

 三重県の少年サッカーの現場を見た時、Jリーグチームのある地域で行われているサッカーとは別の競技をやっているような場面があった。サッカー本来の魅力を真剣に楽しむことを知らない子供達の姿にがく然とし、子供たちの責任ではないことに悲しくも責任を感じた。

 2つ目に、「地域にもたらす経済効果」が挙げられる。『Jクラブの存在が地域にもたらす効果に関する調査』を2009年8月に株式会社日本経済研究所が発表している。その中で、山梨県のJリーグチーム・ヴァンフォーレ甲府の事例が紹介されている。ヴァンフォーレ甲府がもたらす経済効果を約17億円、雇用効果320人、税収効果約3千万円(年間)と示している。
1999年からJ2リーグに参加しているヴァンフォーレ甲府の18年間の累積経済効果は300億円を超えていると考えられる。三重県の総人口の半分にも満たない山梨県でのホーム戦17試合の平均観客動員数は1万人を超える。親子連れや職場仲間やお年寄りの夫婦など年間のべ17万人の人たちが、スタジアムに足を運び週末を楽しんでいる。その17万人は当然、自家用車や公共交通機関などで移動し、飲食もするだろう。アウェーチームのサポーターは地元のホテルや旅館に宿泊し、お土産に巨峰や桃、甲州ワインや信玄餅を買って帰るであろう。

 ネガティヴ思考ではJリーグチームは作れない。日々の暮らしに忙しい私達には、日常生活の中で身近に健全な娯楽が必要であり、それを求める権利がある。「三重県の課題の多くをJリーグチームが解決できる!」そう思えてならない。

中田一三
中田一三

なかたいちぞう 1973年4月生まれ。伊賀市出身。四日市中央工業高時代に、全国高校サッカー選手権大会に3年連続出場。92年1月の大会では同校初優勝をもたらし、優秀選手に選ばれた。中西永輔、小倉隆史両氏と並び「四中工の三羽烏」と称された。プロサッカー選手として通算194試合に出場。現在三重県国体成年男子サッカー監督。