
一見勝之知事の言動に関する相談が三重県のハラスメント相談窓口に寄せられた問題で、県は4日、外部委員の調査報告書を公表した。一見知事の言動は「パワーハラスメントには該当しない」と結論づけた一方、職員から「仕事へのモチベーションが下がる」との声が寄せられたと指摘。一見知事と職員のコミュニケーションに「改善の余地がある」としている。
県によると、報告書の提出は先月28日付。調査委員は弁護士2人と社会保険労務士1人で、委員長は倉田嚴圓弁護士が務めた。委員の人選は三重弁護士会と県社会保険労務士会に依頼した。
昨年12月―今年1月にかけ、職員ら57人に面談での聞き取り調査を実施した。聞き取りの対象は課長級や課長補佐級の職員が中心。一見知事や副知事、県の窓口に相談した職員も含む。
報告書によると、一見知事は職員らがいる前で「これは秘書の責任ですね」「秘書の前さばきができていない」と発言。職員が知事に説明をする「レク」が円滑に進まないことへの発言だった。
また、レクを巡り、指定された時間に始まらない▽時間がかかる―などとする指摘が職員から相次いで寄せられた。「終日待たされた挙げ句にキャンセルされた」との事例もあったという。
これらに対し、報告書は「業務上必要かつ相当な範囲を超えた社会通念上不相当な言動とは言えない」などとして、厚生労働省や県が定義するパワハラには該当しないと結論づけた。
また、秘書らは聞き取りに対し、一見知事の発言を「叱責ではなく、注意や指導だと理解している」と説明。一見知事が大声を出したり、威圧的な態度をすることなかったとしている。
一方、職員への聞き取りでは、レクへの対応から「仕事へのモチベーションが下がる」「何のために仕事をしているのか分からない」「職場がどんよりしている」との声が相次いで寄せられた。
報告書は「レクの時間管理は以前より改善されたが、職員らの徒労感など、ネガティブな感情を払拭するには至っていない」と指摘。「レクの絶対量が多い現状を改善する必要がある」とした。
知事の言動に「パワハラでは」との疑念を持つ職員がいることを踏まえて「コミュニケーションに改善の余地がある」と指摘。職員にやる気を失わせないことは「知事の責務」とした。
一見知事は「パワハラに該当しないとの報告書を受領したが、内容を真摯に受け止め、今後も職員とのコミュニケーションを丁寧に図りながら県民のために職務を遂行する」とコメントした。
問題を巡っては昨年7月、知事の言動について「レクがスケジュール通りに進まない。適切に管理できていないのが原因だと、秘書課の職員を叱る」などとするメールが県に寄せられていた。