大観小観 2025年3月3日(月)

▼早く健康を回復しようと入院するのは、逆に健康障害のもとだと医者が説いているのには驚いた。本紙『すこやかゼミ』で在宅クリニックを運営する医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長が「入院関連機能障害」という聞き慣れない症状で徐々に弱ると言っている

▼高齢者が対象の話だが、ほとんどの患者が信頼する病院の栄養管理と安静指示が原因で、十日で筋肉を七年、認知機能は五年衰えさせるというのだから、話が違うと言いたくなる。誤嚥や窒息を恐れて食べるのを止めて点滴に頼り、転倒回避でベッドで安静を強いられる結果「回復の可能性を奪う」

▼同会の患者で緊急入院した755人(平均90・8歳)のうち、肺炎の約30%、骨折の10%弱が病院で死亡した。風邪で緊急入院し、10日余り後、誤嚥性肺炎で死んだ父を思うと、なるほどという気もし、とにかく病院へと救急車を呼んだあの日に後ろめたさを覚える

▼昨年末風邪を引いてから食の好みが変わった。時節柄餅と麺類が中心となり、好きな寿司(すし)には目がないが、ごはんを見ると食が進まぬ。家人には「食が細くなった」と言われる。寒さで散歩に出かける回数が減ったせいもあるのかもしれない

▼落語の「饅頭(まんじゅう)こわい」みたいな話だが、佐々木理事長は、だから入院はやめて在宅治療にしろと言っているわけではない。老人は痩せやすく、太りにくい。ファーストフードも若い人ほどのリスクはない。対象を狙い撃ちした検査結果で食事制限するより3食食べて体重を増やすのが「命の貯金」と言っている。